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TPP大綱 再生産可能な対策に 森山裕農林水産相×林光繁十勝毎日新聞社会長・主筆対談

  • 2015年11月22日 14時17分

TPP対策や十勝農業について語り合う森山農林水産大臣(右)と林会長・主筆


「北海道」「乳製品」で戦略
後継者の育成が不可欠

  自民党TPP対策委員長だった昨年11月以来の来勝だが、改めて十勝の印象を。

 森山 特に畑作農業は、一番頑張っている地域だ。日本のモデルだと考えている。耕畜連携も進んでいる。21日は帯広市内の十勝加藤牧場を視察させていただき、酪農は良い土で育つ良質な牧草があって、品質の高い生乳ができるとのお話をうかがった。施肥過多な地域では土が弱くなっていて、対策が必要と考えていただけに、うなずかされた。

 十勝は長い開拓の歴史があり、これまでも多くの困難を乗り越えてきた。それだけにTPPに対しても前向きに捉える方が多く、ありがたい。もちろん、TPPで現場に不安があることは承知している。

 25日までに政府の方針が決まる。「再生産可能」をキーワードに、対策を考えていくことになる。再生産というのは、非常に重い言葉だ。後継者がいなければ再生産はできない。

  後継者を育成するには、農業収入が安定することも必要条件だ。TPPではこの部分が揺らぐのではないか、という懸念がある。

 森山 近年、日本食が海外でブームだ。2013年には和食がユネスコ無形文化遺産にもなった。10月末までイタリア・ミラノで開かれたミラノ万博では日本館の来場者数が想定の144万人を大きく上回る228万人となり、日本食の人気の高さを裏付けた。現地を視察した多くの農協関係者は、自分たちの農産物が世界で非常に高く評価されていることに気付いたのではないか。

中国需要に負けぬ増産
  品質の高さは、国際競争力の強さに結び付くと。

 森山 輸出は、現時点から力を入れていかなければならない。政府は農林水産物食品の輸出額を20年までに1兆円規模へ拡大させる目標を掲げているが、順調に進んでいる。今年は7000億円に達する勢いだ。1兆円の大台も、20年より前倒しで実現できるのではないかと考えている。

 特に「北海道」というブランド力は強い。東南アジアでは、北海道と書いてあればすべて素晴らしいもの、という意識がある。

 今後、北海道は牛乳など乳製品を中心に戦略を構築するべきだ。ニュージーランドの大手乳業会社フォンテラが北海道に強い関心を持っているが、北海道というブランド力に期待して、東南アジアに販路を拡大する戦略だろう。

  TPP大筋合意について、重要5項目を守るとした国会決議は守られたという認識か。

 森山 守られたかどうかは国会が判断することだが、ご理解をいただけるところまで交渉は頑張れたのではないか。これまで守秘義務があって説明がなかなかできなかったが、合意内容が公開され各地で説明する中で、理解も広まってきていると思う。

 農産物で関税を撤廃する自由化率は日本は81%。カナダは94.11%、ペルーが96%などとなっていて、アメリカは98.8%だ。日本は非撤廃部分は守った。タリフライン(関税の対象品目の細目)の扱いも、役人が頭を使ってくれた。

 それでも、心配の声は大きいと認識している。例えば牛肉は守れるのか。特に北海道はアメリカ、オーストラリア牛と競合するホルスタインの生産が多いので、懸念の声が高い。

 ここで、食料の国際的な需要の変化について考えてみたい。中国は10年前は牛肉を年間1万トン輸入するにすぎなかったが、昨年は78万トンと急増した。さらに10年後には151万トンの輸入が見込まれている。

 実は豚肉も似た状況で、中国では10年前は14万トンを輸出する輸出国だったのが、昨年は78万トンを輸入し、10年後には128万トンを輸入すると言われている。

 中国の旺盛な需要に、日本が買い負けする事態にもなるのではないか。すでに、アメリカのスミスフィールドフーズという世界最大の豚肉生産・食肉加工業者が、中国資本に変わった。オーストラリアでも大手飼料メーカーを中国資本が買収している。中国はそうした食料戦略を取っている。

 日本としては、今の体制を維持し、さらに増産できるようにしておかないといけない。ホルスタインの雄を資源として大切にするという政策は、今後も必要だ。

  日本の食料自給率についての考えを。

 森山 現在、カロリーベースでは39%にとどまっており、引き上げる努力は必要だ。国民の皆さんには、もっと国産のものを好んでいただければ。例えば、国民全員がお米を1膳ではなく一口多く食べていただければ、自給率は1%向上する。このあたりは食育とも密接に絡んでいる。

安心担保する産地表示
  TPPで食品輸入が増えれば、ポストハーベスト農薬、添加物、遺伝子組み換え作物の流入など、食の安全安心が脅かされるという心配もある。

 森山 こうした懸念については、産地表示をしっかりやる必要があると考えている。例えば、現在の方法ではソーセージもハムも、どこの材料を使っているか、消費者には分からない。

 原料の豚肉の具体的な原産国までは求めないにしても、外国産か国産かという程度まではしっかり表示することが消費者にとって優しい行政ではないか。

  25日までに策定するという政策大綱の方向性は。さらに大綱は今年度補正予算に反映されるのか。

 森山 大綱について安倍晋三首相は「現場の不安に寄り添い、再生産可能な対策を立てるように」と指示されている。この方針に基づいて、しっかりしたものをつくり上げたい。

 具体的な数値目標については、輸出金額の目標などは明確にしていくと思う。ただ、現在の20年1兆円という国の目標は前倒しできるという見通しの中で、どのような表現にするかは考えなくてはならない。

 補正については正式な指示はないが、もしあるとすれば、TPPに関係なく、農業を強くするためにやらなければならないこと、TPPを見据えて今から対策を講じる必要があること、こうした点を見極めしっかり予算措置をしていく考えで取り組んでいきたい。

■宇宙技術の活用を 林主筆
■道内事例がモデル 森山農水相


  大樹町で航空宇宙基地構想が進んでいるが、最新農業ではリモートセンシングなど人工衛星との連携も不可欠だ。農水省としての考えは。

 森山 ICT(情報通信技術)の活用は今後の農業の重要な課題で、避けられないと考えている。北海道でのリモートセンシング、ICT農業は一つのモデルとして捉えている。

  農畜産物の十勝管内JA取扱高は今年、3000億円台に到達し、3100億円台をうかがう見通しだ。さらに、農産物の品質の高さも定評がある。

 森山 県単位でも3000億円を超えているところは少ない。大変な数字だ。

 私がTPP対策委員長を務めていたとき、中川郁子衆院議員から「守るべきは重要5項目だけではない、十勝では輪作体系の中で、豆類も重要な位置を占めている」と発言していただいた。このため、重要「5項目」を「5項目等」という表現に改めたが、この“等”は豆類を意識した。

 十勝は昔から畑作農家にとって憧れの土地だ。農業を担う優れた人材も多い。女性の活躍も心強い。何かの調査で見たのだが、女性が参画する農業経営は、非参加と比べて売り上げが13%程度多くなるという。

 特に6次産業化では、どのような商品を作るかというとき、女性の視点は重要になってくる。

 一億総活躍社会、私はこれは農業の社会だと考えている。
文・長田純一、写真・折原徹也(文中敬称略)

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