HOME 十勝毎日新聞社ニュース 政府TPP対策 「攻め」の農業 不安と期待 安定供給へ戦略必要
   | メール配信登録  twitter facebook |

十勝毎日新聞社ニュース

政府TPP対策 「攻め」の農業 不安と期待 安定供給へ戦略必要

  • 2015年10月10日 13時13分

 政府は9日、環太平洋連携協定(TPP)対策として、輸出や生産拡大などに意欲を持つ「攻め」の農業支援の方針を示した。これに対し、十勝の農業関係者は既に行っている取り組みの後押しになると期待する声もある。一方、十勝は食料自給確保のための作物も多く、「輸出品ばかり作れない」「農家戸数減少で地域の衰退が心配」との声も強い。

輸出対応の新工場の整備が進む道畜産公社道東事業所十勝工場(帯広市)。十勝でも既に進む「攻め」の農業に政府がどう支援するか注目される

 十勝管内では管内8JAで生産する「十勝川西長いも」が輸出の筆頭格で、台湾や北米、シンガポールなどに出荷されている。過去最高だった2012年産は輸出額が9億円以上を記録した。

 上士幌町でナガイモを生産する全十勝地区農民連盟の西原正行委員長(51)は「輸出支援はぜひやるべきだが、品質がいいだけではできない。ナガイモはたまたま台湾の薬膳に合った。1農家や1JAではできない相手の国の文化を含めた戦略を考えて」と求める。その上で、ナガイモは「耕作面積のわずか一部。ナガイモが土の中で深く育つ土壌は限られており、広げられない。農家戸数が減って1戸の面積が広がれば、高付加価値の作物まで目が届かない」と指摘する。

 ナガイモは連作障害が出やすく、何年も続けて作っている他県では作付け前に薬剤で土壌をいぶす「薫蒸」をして生産している畑もある。JA帯広かわにしではこれを防ぐため、作物をローテーションする輪作にタマネギを取り入れるなど対策を進める。

 同JA関係者は「ナガイモ輸出は国内が供給過剰になるのを防ぐ、価格安定の目的もある」と指摘し、輸出だけに焦点を当てた対策の危険性を指摘する。

 酪農ではよつ葉乳業が、十勝の生乳を使ったソフトクリームを台湾セブンイレブン向けに輸出。14年度の販売高は前年度比約2倍の6億4000万円となるなど、急成長している。

 ただ、十勝管内の酪農家は「輸出が増えるのはいい」としつつも、「そもそも国内がバター不足になるなど、供給が十分でない。そちらの対策が先では。国産を輸出して国内はニュージーランドを消費するのか」と懸念する。

 ニュージーランドは中国向け輸出拡大で設備投資などを重ねたが、中国経済の減退で生乳が余って乳価が低下し酪農家が危機に。TPP参加国へ輸出で危機を回避しようと、輸入枠拡大を求めてきた経緯もあり、輸出に頼る危険性もある。

 畜産では国産牛として主力の十勝の乳用種の牛肉を、タイやベトナム、一部の生産者はシンガポールに輸出している。道畜産公社(札幌)は来年3月完成に向け、道東事業所十勝工場を北米輸出に対応した世界レベルの衛生管理を備えた工場を増設している。

 芽室町で畑作100ヘクタールを経営し、経済団体で牛肉も含むシンガポールなど海外への販路拡大に取り組む尾藤農産の尾藤光一社長(51)は「農家が助けてくれとばかり言うのはどうかと思う。頑張っている農家の声を聞くべき」と指摘する。その上で、「海外輸出に取り組んで分かったのは、日本の農産物が品質が高く、技術も素晴らしいこと。政府が判で押したように集約化だ輸出だというのは、インテリジェンス(理解力)がない。日本の農業が駄目だと消費者に誤解を与える」と話している。(眞尾敦)

観光特集(勝毎電子版)
十勝川白鳥大橋ライブカメラ
6~12時 12~18時
24日の十勝の天気
最高気温
28℃
最低気温
18℃
朝日デジタル

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み