HOME 十勝毎日新聞社ニュース TPP~TPP大筋合意見送り 乏しい情報、焦り
   | メール配信登録  twitter facebook |

十勝毎日新聞社ニュース

TPP~TPP大筋合意見送り 乏しい情報、焦り

  • 2015年8月2日 14時14分

レストランで情報交換する高橋知事、飛田稔章JA道中央会会長、有塚会長ら訪問団。現地での情報収集は容易ではなかった(現地時間30日、米ハワイ州マウイ島で)

他国要求に怒号も 農業団体現地訪問団
 【米ハワイ州・マウイ島】「現地にいる方が正確な情報が伝わってこない」「こちらの方が交渉の状況を聞きたいくらい」-。現地時間7月28~31日に行われた環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合。これに合わせ現地入りしたJA道中央会など、道内農業団体の16人で組織した訪問団や高橋はるみ知事ら道庁関係者にとって、緊迫と困惑の4日間になった。

 現地では自民党の議員団らと面会し、国会決議の順守などを要請する“地上戦”と、携帯電話やメールで関係者、地元と情報交換したり、各社の報道をチェックしたりする“空中戦”の両方が展開された。

 特に困惑が広がったのは交渉最終日の31日。それまでは知財分野での交渉が難航していると伝えられ、農業分野は既に決着しているかと思われた。ところが、交渉の土壇場になって突然、「ニュージーランドがバターなど乳製品の輸入枠拡大を強く迫っている」との情報が伝わってきた。「酪農王国・北海道の危機だ」。訪問団全体に衝撃が走った。

 十勝地区農協組合長会の有塚利宣会長も「北海道の農業、食料を差し出して何を得ようとしているのか」と語るなど、怒りの声が広がった。

 当初、31日午後1時半に設定されていた参加12カ国による共同会見に先立ち、自民党議員団による交渉状況の説明会が開かれる予定だった。しかし、会見は延期に。説明会も仕切り直しとなり、現場は混乱した。

 訪問団の一行は、連日の活動と急な待機指示に疲労の色を隠せない。時間の経過とともに、焦りやいら立ちも見え始めた。

 公務のため先にハワイを離れた高橋知事に代わり情報収集に当たった道の担当者も、交渉の行方が分からぬまま、道庁との連絡を続けた。

 仲間意識の気安さからか、訪問団の1人が「逆に今はニュージーランドを応援したくなる。日本の農業者にとって受け入れがたい無理な要求を続けて、交渉そのものが流れてくれれば」と本音をつぶやいた。結果としてそれが半ば現実となり、迎えた午後4時の会見で合意見送りが発表された。

 同7時から、交渉を終えた甘利明TPP担当相も参加した自民党議員団の報告会が行われ、本道からの訪問団も出席した。報告会には、TPPを強く推進する対極の立場で現地入りした経団連幹部ら経済界の訪問団も出席。甘利大臣ら交渉団や自民党議員団を含め、会場に入る足取りと表情はいずれも重く、「勝者のいない交渉」を強く印象付けていた。

引き続き国会決議順守を求める飛田会長(現地時間31日、ハワイ州マウイ島で)

妥協許されず判断賢明 飛田会長
 【米ハワイ州・マウイ島】環太平洋連携協定(TPP)は、4日間にわたる閣僚会合の結果、大筋合意は見送られ、閉幕した。現地で交渉の行方を見守った飛田稔章JA道中央会会長(JA幕別町組合長)に合意見送りの受け止めや、現地訪問の成果について聞いた。

 -4日間を振り返って。
 与党である自民党や政府と接点を持ち、農業者として伝えるべきことはすべて伝えられたと思っている。安易な妥協は許されず、(合意の先送りは)賢明な判断だと思う。

 -地方の農業者が集って訪問団を組織したのは北海道が各国で唯一だった。
 私は今回、JA全中の副会長として日本全体の農業を守るという立場であったが、それは北海道・十勝の農業を守ることに変わりない。北海道・十勝の農業が関税で守られている部分が大きいのは食料基地、自給率向上という使命を負っているから。訪問団は北海道の生産者がその責任をいかに真剣に感じているかという意識の表れだ。

 -農業分野では強硬な姿勢で日本に厳しい要求をする国もあった。
 各国がそれぞれの「重要品目」を持ちながら、自国の犠牲を最小に、利益を最大にするため、譲れない思いを持って交渉に臨んでいるのだから当然だ。もちろんそれは日本にもあって、強い思いがあるからこそ合意に至らなかった。

 -交渉は続くが、どのように行動していくのか。
 交渉が決裂し、参加国が解散したのではなく、これからも不透明な状況は続く。われわれとしては、関税を下げることや農産物の輸入枠を設けることに明確に反対する立場であることに変わりない。

再会合を注視 高橋知事帰国
 米国ハワイ州で開かれていた環太平洋連携協定(TPP)閣僚会合に合わせて現地入りしていた高橋はるみ知事が1日夜、帰国した。新千歳空港で記者団の取材に応じ、「(JA道中央会の)飛田稔章会長らと情報交換し、(開催の可能性がある)8月下旬の再会合に向けてしっかり注視し、必要なアクションを取っていきたい」と話した=写真。

 高橋知事は現地での成果を「どういう形で相手方、政府、自民党関係者と接点が持てるかあまり予定が持てなかった」と前置きしながら、甘利明TPP担当相と面会し全国知事会の要請をしたことを挙げ、「北海道知事として十勝の輪作の状況や重要5項目の現状を説明できた」と強調した。

 大筋合意に至らなかったことを「報道の情報が先行したことは懸念するが、結果はひとつの結論。攻めるべきところは攻め、守るべきところは守るということに共感を持った。TPPにかかわらず北海道農業、1次産業の競争力強化、攻めの1次産業に取り組みたい」と述べた。

 閉幕前に帰国の途に就いたことについて、2日に札幌で開かれる故町村信孝前衆院議長のお別れの会出席を理由とし「私自身の判断」とした。

「政府前のめり」 十勝の各団体
 環太平洋連携協定(TPP)閣僚会合の大筋合意が先送りとなったことに、十勝管内の各団体の代表者も「国会決議順守を」「じっくり協議すべき」などの声を寄せている。

 管内30団体でつくる「TPP問題を考える十勝管内関係団体連絡会議」の高橋正夫代表(十勝町村会長、本別町長)は「交渉妥結に前のめりになっている政府の姿勢が見えてきた。現時点の議論では、農産物5項目の国会決議は守られておらず、政府の姿勢は問題」と政府への不信感をあらわにした。

 帯広商工会議所の高橋勝坦会頭は「先送りということで、じっくり協議すべきだと思う。交渉内容がおぼろげに分かり、方向性が見えてきたので、この情報をもとに国内でも議論を深めていくべきだ」と述べた。

 連合十勝の編田二郎会長は「重要5項目を含め日本は妥協に入っており、これ以上何を譲歩するのか。(TPPが合意されれば)保険や医療など国内制度は崩壊しかねず、命や生活が金で決まってしまう」と懸念を示した。

観光特集(勝毎電子版)
十勝川白鳥大橋ライブカメラ
6~12時 12~18時
30日の十勝の天気
最高気温
27℃
最低気温
12℃
朝日デジタル

今、なぜ「かちまい」…
ご購読のお申し込み