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十勝毎日新聞社ニュース

TPPに直面 十勝農業の針路は 反対、賛成派 市内で講演

2013年07月13日 13時25分

 環太平洋連携協定(TPP)が参院選の争点としても注目される十勝で、反対、賛成のそれぞれの立場を取る有識者が5日、帯広市内で講演した。有機農業を推進してきた茨城大学の中島紀一名誉教授は、セミナーでTPPを必要とするような社会そのものの変革を訴えた。北海道中小企業家同友会の講演会では、TPP推進派の論客で、元農水省官僚でもあるキヤノングローバル戦略研究所(東京)の山下一仁研究主幹が、TPP参加後の農業保護政策などについて語った。要旨を紹介する。(眞尾敦)

中島・茨城大名誉教授
有機農業で自然と共生

 TPP交渉参加とアベノミクスで、十勝の農業は大きな岐路に立っている。

 今、考えるべきことはわずかな活路を見いだす「生き残り」の道ではない。TPPへの道を進んでしまう現代社会に対し、その道は違う、本当の道はここにあるということを、農の立場から、力強く示さなければ。農を軸とした本当の道を、皆がともに歩むうねりをつくり出すことが必要だ。

 TPPに負けない強い農業をつくるのではなく、十勝の大地の恵みをいただき自然とともに豊かに生きる、新しい十勝をつくりあげていくことが大事だ。

 企業や社会の在り方を根本的につくりかえよう。日々、私たちが田畑で土と向き合うことは、その難しいテーマを自分の圃場(ほじょう)で作物とともに追求していくこと。有機農業は単に作物が良くなり、土が良くなることではない。

 近代農業は科学技術を使った農業形態と言われるが、実態は工業が生産した資材を農業に投入して生産力を上げていく。工業生産のマーケットに農業を切り替えていく。有機農業は化学肥料や農薬を使わないのではなく、自然の力に頼り、工業生産力の応援を得なくても、何万年も続いてきた。何万年先の永続的な人類社会をつくっていく基礎として有機農業はある。

 (地球の環境容量を表す)エコロジカル・フットプリントという考え方では、2010年に地球の容量は30%オーバーしている。経済成長もグローバル化も必要だ、しかし環境は守らなければと世界全体がそう望む。しかし、この方向では容量オーバーの問題は解決しない。

 地域を大事にして環境も大事にする道筋は、農業と農村にある。有機農業の長い歩みの中でやっと道が見えてきた。(資材の)投入を減らして頑張れば、簡単ではないが道は開ける。

 工業生産に依存した多投入の農業でなく、豊かな自然条件をわが物とし、ともに生きるための道として有機農業を考えよう。この在り方が社会の中で広がれば、TPPに負けない、というよりTPPに巻き込まれない人間本来の社会をつくる道につながっていく。

山下・キヤノングローバル研究主幹
関税撤廃で輸出促進を

 尖閣諸島の事件後、中国はレアアースの日本への輸出を禁止した。中国の力に力では対抗できないが、ルールで対抗できる。そのルールを決めるのがTPP。アメリカはアジア太平洋地域のレベルの高い規律をつくり、中国を取り込もうとしている。

 小麦は価格維持のため、高い関税で値段を上げている。上がった値段を消費者が負担している。アメリカやEUのように直接支払いに変えれば、消費者負担をなくせる。

 直接支払いで農家は影響を受けないが、消費者にはプラス。価格に応じて販売手数料収入が決まる農協は影響を受ける。本当は「TPPと農業問題」ではなく「TPPと農協問題」だ。

 多国間交渉では仲間を見つけられる。食の安全規制などではオーストラリアなどと連携してアメリカに対抗できる。日本が孤立するとすれば、農業について関税撤廃の例外を要求するときだ。例外を要求するのは難しいだろう。

 国内市場は高齢化と人口減少で胃袋が小さくなる。国内だけ相手にしても、日本農業は安楽死するしかない。皆さん方は安楽死するのか。嫌なら輸出がある。相手国に100%の関税があったら輸出できない。TPPで相手に関税を下げさせる必要がある。

 農業は規模だけが重要なのか。アメリカは1戸当たりの農地面積ではオーストラリアに比べ狭いが、負けていないので、この論理はおかしい。作物や生産性の違いを無視している。最も重要なのは品質の違い。

 牛乳は輸出できないか。北海道から本州に輸送しているのだから中国にも持って行ける。中国の農産物は価格が上がっており、日本から輸出のチャンス。中国の飲用牛乳の消費は飛躍的に拡大している。日本の安全な牛乳を持って行く先が近くにある。

 日本の小麦には将来があるとは思わない。十勝は輪作体系を確立したとされるが、畑作4品をつくってきたのは高い価格支持政策があったから。価格支持をやめ、1ヘクタール当たりで直接支払いを行い、何をつくっても自由とすべきだ。

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