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十勝毎日新聞社ニュース

「グローバル経済と日本」 浜矩子同志社大教授講演要旨

2012年11月23日 13時41分

 20日に北海道ホテルで開かれた十勝帯広はまなすクラブ(林光繁会長)の講演会では同志社大大学院ビジネス研究科の浜矩子教授が「これからどうなる・グローバル経済と日本」をテーマに講演し、グローバル経済や環太平洋連携協定(TPP)などの自由貿易協定について語った。講演要旨を紹介する。(犬飼裕一)


はま・のりこ
 東京出身。三菱総合研究所に入社し、初代ロンドン駐在員事務所長などを務めた。専門は国際経済学。BBCやCNNなどメディアにも出演多数。著書は「ドルは蘇るか ドル興亡史に何をみるか」(日本評論社)など。

「君富論」へ発想切り替えを
懸念テーマは「恐慌」「戦争」「激変」

 今の状況を一言で表現すると「地球は一つ、されど国々は多数」ということ。人、物、金が簡単に国境を越えられる状況にある中、国々は国境を越えられない。国民国家の経済運営、政策運営は非常にやりにくくなっており、これまでの常識では考えられない状況が起こっている。

 われわれが懸念を共有するテーマは(1)2つの恐慌(2)1つの戦争(3)1つの激変−だ。

 (1)は財政恐慌と中央銀行恐慌のこと。恐慌とは「経済活動のショック死現象」。民間経済が危機のときにレスキューするのが財政だが、今はレスキュー隊をレスキューするためにわれわれが大増税に甘んじなければならない状況になっている。

 さらに恐ろしいのが中央銀行恐慌。欧州中央銀行(ECB)は国債の無制限買い取りを宣言し、通貨の価値を守る役割を任されているものが、不良債権を積み上げて財政を悪化させている。債権の買い取り枠を拡大した日銀も同じ立場に追い込まれつつある。

「鎖国」に踏み出す
 (2)は通商戦争のことだ。国民・国家レベルでの政策運営が難しくなっていると政策責任者が気付いたときに悪魔がささやく怖い一言がある。「鎖国」だ。人、物、金が国境を越えないようにすれば良い。悪魔はさらに「広い領土や豊かな生産資源を確保した上で鎖国すべきだ」とささやくだろう。政策責任者が誘惑に駆られて動いた結果が、1930年代のブロック経済。一足飛びにこうなるとは思わないが、半歩・一歩と世の中が踏み出していると受け止めざるを得ない展開が続いている。

 それがTPP問題だ。日本の論争は、例外なき自由化、より一段の市場開放を受け入れるかどうかで進んでおり、焦点がずれている。TPPはむしろ正反対で、日本と世界に例外なき貿易の「不」自由化を迫るものだ。特定エリアを囲い込み、フェンスの内側に入るものと(のみ)貿易を強化するもの。囲いの外に取り残されたものと内側に入るものの貿易「不」自由化につながる。自由貿易協定は「地域限定排他貿易協定」と言い換えてほしい。

 TPP型の協定は相手を特定しており、世界貿易機関(WTO)の無差別原則に違反している。「地球は一つ」のグローバル経済の時代に国々による地球経済の「切り刻み」が始まっているということ。排他性の強い貿易協定がはやるのは大きな懸念材料だ。

一国多通貨体制も
 (3)は通商に関するテーマ。単一通貨圏でいるためには物価や賃金水準が横並びであるなど、地域経済の格差が存在しないこと、格差があっても中央所得再分配装置があることが必要。今のユーロ圏にはどちらもない。単一通貨圏は存在できず、遠からず消滅するだろう。グローバル経済の中、日本も(再分配機能が)働かなくなると地域それぞれが独自通貨を持つ一国多通貨体制に移行するような大激変に至る可能性もある。

 グローバル経済の下、同体制が当たり前になる可能性がある。流れは自然だが、地域限定・排他型の経済運営となる可能性がある。これら全てが悪い方向に行ったとき、多数の国々は一蓮托生(いちれんたくしょう)、みんなで奈落の底へ落ちていく。

 回避へのキーワードは「(アダム・スミスの)国富論を超えて」だ。「自分さえ良ければ」の「僕富論」から相手の富が増えるよう願う「君富論」への発想の切り替えが必要。国レベルにおける僕富論の代表は国産品の愛用、企業内での君富論は「トヨタの従業員は日産の自動車を買う」ということ。「情は人のためならず」とも言える。

 今日は一つの契約を結ばせてもらいたい。部屋を出たときから君富論の普及に全身全霊を上げてほしい。永遠の暗闇か夜明けかは、皆さんの君富論の履行次第だ。

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