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十勝毎日新聞社ニュース

トムラウシ山遭難事故から3年

2012年07月16日 14時24分

3年前に大規模遭難事故が発生しながらも、多くの登山者が訪れるトムラウシ山。後方中央が頂上

 【新得】トムラウシ山(2141メートル)でツアー客ら9人が死亡した山岳遭難事故から16日で3年がたった。登山者の数は事故前の水準には回復していないとみられるが、大雪の雄大な景観は、全国の山岳ファンを引き付け、“一度は登りたい山”としての地位は揺らいでいない。

 午前3時半、短縮登山口には本州ナンバーを中心に35台の車が駐車し、薄暗いうちから登山者が続々と山に入った。コマドリ沢の雪渓を登ると、イワブクロなどの花々が咲き乱れ、頂上を見上げる標高1720メートルの前トム平は休息する中高年の登山者らでにぎわっていた。

 この日、山に登った海野裕次さん(73)=静岡市=は3年前の事故当日の3日後に、事故の当事者となったツアー会社でトムラウシ山に登る予定だった。事故の翌年に初登頂を果たし、今回が2度目の登山。「事故はあったが、トムラウシは何度でも登りたい山。予備日を持って日程を組み、判断に迷うときは山に入らないようにしている」と語った。

減らない遭難
 登山者にとって憧れの日本百名山「トムラウシ山」。この美しい山で起きた未曽有の遭難事故から3年がたつが、道内の山岳遭難事故は減らず、ツアー登山の危うさにも変化はない。それでも、事故を境に中高年の登山者には北海道の夏山に登るリスクが浸透しつつあり、少しずつだが意識の変化も起きている。

 道警釧路方面本部地域課によると、過去5年間(2007〜11年)に同方面で発生した山岳遭難事故は37件。トムラウシ山は11件と突出し、09年の9人死亡事故を含め10人が死亡、1人が不明となっている。

 道内全域では5年間に230件の遭難が発生。トムラウシ事故が起きた09年は49件だったが、10年も49件、11年は55件。年齢別では60歳代が際立って多い。釧本地域課の糸井英範安全対策係長は「いまだに登山届さえ出さず、軽装備の人もいる。3年前の事故の教訓が生かされていない」と指摘する。
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 「あれだけ悲惨な事故があっても、トムラウシ山のブランドと魅力は別物。同じような事故はまた必ず起こる」。自ら登山ツアー会社「シエラガイドツアー」(本社大阪)を経営する日本山岳ガイド協会の三浦靖男理事は警鐘を鳴らす。

 道内の山岳縦走は、本州に比べ1日当たりの移動が長く体力が必要。しかし、体力・技能の両面から参加に耐えられない客の申し込みも依然少なくない。特に中高年層客の一部には、訓練を積まず、コンパスの使い方さえ分からない人も。同社では経験や装備などを厳しくチェックし、場合によっては断るという。

 ツアー形式自体のリスクも大きい。直前や催行中の中止に対して契約不履行で代金の返還を請求されるケースもあり、ツアー強行を誘発する心理要因の一つになっているという。

 ツアーで旭岳から縦走してきた神戸市の77歳の女性は「1日12時間の行動。初めての山なのでガイド付きじゃないと怖いですから」と疲労気味の表情で話し、下りの悪路を集団に遅れまいと必死についていった。
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 一方で事故以来、登山者の意識には変化も見られる。関東の熟年7人パーティーでリーダー役を務めていた千葉県の男性(70)は「縦走なので余裕を持った日程にした。雨なら動かないようにし、悪天候なら途中で下りて観光に切り替える」と、あらかじめメンバーに同意を取っていた。

 岐阜県から夫婦で訪れた安藤晴夫さん(63)は中腹まで登ったところで登頂を断念した。「風雨が強くなり、体調も心配だったので引き返した。大雪の山は頂上だけではなく、花や景色も同じくらい価値がある」と、迷いはしたが決断に後悔はなかった。

 本来当たり前の“無理をしない”行動が、余裕のない日程や自分の実力の認識不足、人任せの判断によって狂う。糸井係長は「トムラウシは決して甘く見てはいけない山。事故の教訓を生かし、しっかりとした登山計画を立ててほしい」と訴えた。

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