十勝毎日新聞社ニュース
トムラウシ山遭難事故 なぜ… 行程ルポ
2009年08月23日 13時50分
魅惑の絶景 風雨で一変
【新得】大雪山系トムラウシ山(2141メートル)で、ツアーの登山客ら9人が凍死した遭難事故から約1カ月たった8月中旬、同山を登った。登山愛好者は絶えず、美しい景色を楽しむ様子からは、惨事は想像がつかなかった。ただ、天候が急変すると、踏み出す足の重さを感じた。ツアー客らが歩いた現場をたどり、改めて事故がどうして起きたのかを考えた。(藤原剣、写真・塩原真)

ツアー客らと同じルートをたどる記者(北沼付近で。16日午後1時ごろ)
重い足 必死で前へ
ガイドらの判断に疑問
16日午前6時、天候は快晴。トムラウシ短縮コース登山口から、ヒサゴ沼避難小屋を目指した。ナキウサギやシマリスがときおり愛らしい姿を見せ、ウサギギクやイワギキョウなどの高山植物が自生し、一部には雪渓も残る。雄大な自然を堪能でき、日本百名山の魅力にひたった。
避難小屋に午後3時半到着。縦走で疲れているツアー客らはここで休みを取り、翌日風雨の中を出発した。記者が宿泊した夜も、青空が澄み渡っていた天候は一変し、雨と風が小屋の屋根をたたく。目が覚め、事故のことを思うと、まぶたを閉じてもなかなか眠れなかった。
取材の関係で急きょ、17日未明に出発、ヒサゴ沼避難小屋からひとまず北沼を目指した。雨と風はやや収まっていた。がむしゃらに雪渓を通り抜け、稜線(りょうせん)を歩いてまた岩場に。見上げるほどの岩場越えはきつく、自然と息が切れた。約3時間半かかって、北沼が近づく。
足滑らせ身震い
前日の疲れに加え、降りしきる雨と風が容赦なく体を冷やす。ぬれた岩に足を滑らせるたび、身震いする。止まったら、危ない−そんな思いが頭の中を駆け巡る。重い足を必死で前に出した。
事故当時、一行はヒサゴ沼避難小屋から北沼まで、通常の倍以上の約5時間をかけて歩いてきた。激しい風雨にさらされ、何日間も縦走してきたツアー客らにこの岩場を登り切った後、体力がどれほど残されていたのか。岩場に続く道は吹きさらしの状態で、身を隠すような巨岩はない。当時、この辺りで初めて女性が動けなくなり、後に命を落としている。
北沼周辺ではさらに5人がビバークした。ガイド1人が客10人を先導して下山を目指す。短縮コース登山口まで通常でも5〜6時間かかる。一行はちりぢりになりながらも下山、結果4人が命を落とすことになった。
南沼キャンプ指定地で記者らは1泊したが、風がテントを揺らし、降りやまない雨音におびえた。ツアー客らはずぶぬれだった。一体どんな気持ちだったのか、想像を絶した。一行は前トム平で初めて通報したが、南沼キャンプ指定地でも携帯電話の電波が通じた。ガイドらの判断が正しかったのか、自分の残された体力を考えると疑問が残った。
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