エゾシカは今[4]
ユクトパ・ランナ・タペソロ

★資源★

「野性シカがいるのだから、せっかくの有効資源を最大限に活用し、シカがいたら困るというのではなく、人間との共存共栄の立場に立って考える必要がある」と語るのはJA鹿追町の伊東正男開発室長。同JAでは1990年からエゾシカの飼育をスタートし、角のエキスを取り出した鹿幼角酒「気快」を93年から発売している。さらに、昨年12月からは狩猟解禁日にハンターが撃ったシカを主体にしたシカ肉生産工場もスタートさせた。

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角や肉の利用を目的にJA
鹿追町が飼育しているシカ

昨年12月から今年1月にかけて200頭以上のシカを買い取って加工した。「大きさや肉質など良いものは一頭最大2万円で買い取った」(伊東さん)。肉は地元や首都圏の高級料理店などに流通している。

伊東さんは「農家の副収入と資源の有効活用を目指して実施している。将来的には有害鳥獣駆除の肉も活用方法を考えたい。肉だけではなく内蔵、皮、スネ肉などすべて利用する方向で考えている」と話す。また、同JAではシカ肉を使ったさまざまな料理のレシピを作り、町民に配付することも考えており、町民のシカ肉需要増にも力を入れていく考えだ。

また、シカによる被害総額が2億円を突破(1995年度)し、被害対策に悩む足寄町でも、町が「エゾシカの有効活用を」と解体処理施設を昨年1月にオープンした。町では「東京のフランス料理店にも販売しているが、電話をかけたり出向いたりして新たな販売先を開拓している」という。「ロースとかヒレはレストラン関係で売れるが、モモが余るのでセット販売も考えなければ」(町)と話す。

「将来的にはシカ肉の利益でシカの食害など被害対策に充てたい」と町では話しているが、利益を上げるまでの道のりは険しいようだ。

両町での試みはシカ肉の安定供給、肉の安全面を考えた十分な検査などコスト的には難題も多い。しかし、農作物被害に悩む農家、被害を減らすためのハンター、撃ったシカを買い取る加工施設のトライアングルが確立することで、今までボランティアに近い状態でハンターがシカを駆除し、廃棄していた状況から比べれば、大きな前進といえる。今後、道を主体にしてどのようなシカ対策が行われるか未知数だが、両町の取り組みは全道的にみて、参考になる要素が多く含まれていることだけは間違いない。(つづく・社会部=竹村浩則)


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