アウトドアって何だろう[3]
ドイツ・アイルランド視察記

静寂の湖上で釣り〜糸垂れるだけで心躍る
ミュンヘンからパリ経由でアイルランドの首都ダブリンに入る。本場のギネスビールの強烈な渋味が、連日の肉料理で疲弊した胃袋を刺激する。

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釣果ゼロ。寒さが身にしみた湖のパイク釣り
ダブリンから西に列車で約2時間。広大な牧草地に湖が点在するロスコモン県は湖水地方と呼ばれ、釣りの名所として昔から釣り人が集っていた。太公望はファームインに長期間滞在しながら、田園地帯でゆったりと釣り糸を垂れる。派遣団のアウトドア体験第1弾は、この“釣り”だ。

船外機付きのボート2隻に分乗した団員は、牧草地域を流れる川をゆっくり下る。時刻は午前9時。曇り空の下、冷気に包まれたキルグラス湖には、ほかに釣り人の姿はない。派遣団で唯一、釣り経験豊富な橋本政人さん(帯広市商工課工業係長)の手ほどきを受け、トローリングのルアーフィッシングに挑戦。狙いはパイク(川カマス)。

2時間の釣り費用はボート1隻15ポンド(約3,000円)、ガイド1人20ポンド(約4,000円)、さおは1本5ポンド(約1,000円)に補償金35ポンド(約7,000円)。補償金はさおを無事に返した段階で戻ってくる。

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朝日を浴びて草をはむ馬たち。アイルランドは牧歌的ムードにあふれている
静寂に覆われた湖上に船外機の音だけが響く。“当たり”もない。体は冷え切り、会話も途切れる。ただ1人、釣り上げ寸前で逃げられた松島隆さん(帯広住設社長)が「大きかった。開いた口は、こぶしが入るほどだった」と興奮していたが、それもつかの間。十勝に住んでいてさえ、釣りに行こうとしない人間に、そう簡単に“至福の瞬間”が訪れるわけもない。

ただ、釣り糸を垂れるだけで心が躍った。湖面を見詰めながら、以前読んだ開高健の「オーパ!」に紹介された中国の古諺(こげん)を思い出そうとしていた。

−1時間、幸せになりたかったら酒を飲みなさい。3日間、幸せになりたかったら結婚しなさい。8日間、幸せになりたかったら豚を殺して食べなさい。永遠に、幸せになりたかったら釣りを覚えなさい。(社会部=鈴木斉)


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