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リストカット(手首自傷)症候群
イライラした時、切ったら気持ち収まった
表面的な“良い子”…現実避難
A子(16)はいつものように高校の保健室へ行き、養護教諭のそばに座ると、昨日の出来事や友達のことを話し始めた。A子は入学三週間後には保健室へ頻繁に通うようになり、連休が明けると一日のほとんどを保健室で過ごすようになっていた。
養護教諭がA子の変化に気付いたのは六月に入ったころ。手首に無数の傷跡を見つけた。「どうしたの」と聞くと「カミソリで切りました」とあっさり答えた。
その後もA子は手首を傷つけた。「イライラしたときや思い詰まったとき、(手首を)切ったら気持ちがすーっとした」という。以来、リストカットは彼女の習慣になっていった。「別にこれで死ねるとは思ってないし…。でも(切ったときのことは)よく覚えてない」とつぶやく。手首を傷つけると、気持ちは不思議と静まった。

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さまざまな悩みが集まる保健室。話を聞いてもらうだけで、落ち着くケースも多い(本文と写真は関係ありません)
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手首の内側を軽く切ることで心を落ち着かせる手首自傷症候群(リストカットシンドローム)。神経症、情緒障害の一種で、最近十勝管内でも十歳から二十歳代の若者の間で増えている。道立緑ケ丘病院(音更)の田中康雄児童精神科医師は「行き場のない気持ちのけりの付け方。ほとんどの場合、対人かっとうが引き金になっている」と指摘する。
管内の職業高校に通うB子(17)は、寮で同室のC子(17)が手首を傷つける姿を一年間見続けた。「初めはちょっと抵抗あったよ。でも私が痛いわけじゃないし、死のうとしているわけでもないから。やりたきゃやればって感じ。ここにはカミソリなんてないから、カッターや彫刻刀でやるんだよね」とC子に目を向ける。
C子が手首を切るといつも薄く血がにじんだ。「出血が多いときもあるよ」とぼそっとつぶやく。「だって高校生って結構不安定なんだよ。ちょっとしたことでイライラするし、ムカつくし。彫刻刀で腕に好きなアーティストの名前を彫ってる友達だっている」。C子は冷静に、解説でもするように話した。
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精神科の扉をたたく多くの少年少女がリストカットをしている。田中医師によると、手首以外にも前腕を切ったり中にはおなかを傷つける子供もいるという。頻繁に切り、習慣化していくのが特徴だ。しかし、自殺に至るものは少なく仲間うちで、はやってしまうこともある。血を見るとわれに返ってはっとし、「生きているんだ」と思うとほっとするという。
田中医師は「友達とうまくいかない、父親にしかられたなど、ちょっとした出来事が誘因となっている。乳幼児期に母親との関係が比較的不安定で、親離れができず、表面的には“良い子”に多い症状。周囲に対する怒りの処理がうまくいかず、とりあえず切ることで逃げているが、彼らは切ることで決して死ねると思っていない。現代の若者の特徴」と語る。
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二十世紀最後の今年、バスジャック事件や殺人など凶悪事件に走る「十七歳」がクローズアップされた。犯罪の裏には少なからずいじめなどで傷ついた心があったという。不登校、学級崩壊、児童虐待と、子供たちを取り巻く環境はさらに深刻化し、問題は乳幼児期から起こっているという指摘も多い。傷つき、追いつめられている子供たちの現状を追った。
(社会部=岡村忍)(00.12.11)
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