川、次世紀へ(5)

十勝の姿勢が世界の手本に


★国際貢献★

地域住民と連携強化を

JICA北海道国際センター・帯広所長
渡部義太郎氏

 清流日本一の札内川をバックに、十勝の流域環境を維持しようという取り組みは、世界でも注目を集めている。発展途上国の河川管理担当者が対象の国際協力事業団(JICA)北海道国際センター・帯広の「地域流域環境コース」には、定員の三倍以上の応募があるという。河川の環境保護や防災システム、地域住民の美化活動などを学ぼうと、やって来るのだ。

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「研修員は十勝の例を参考に国の事情に合った最善策を考えてほしい」と話す渡部所長

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 「各国の河川環境の改善に役立っているという手ごたえは感じている。ただ、日本がここまで来たのも、水俣病や自然破壊などの苦い経験があったからこそ。日本一の清流・札内川も何度かランキングを落としたが、住民や行政が環境を守ろうと努力してきた結果、再び返り咲いた。技術協力はもちろんだが、そういった十勝の人々の姿勢が研修員たちの参考になっているようだ」
 同センターの渡部義太郎所長は、同コースの成果をそう語る。同コースでは、地元の「ヌップク川をきれいにする会」や「音更川グラウンドワーク研究会」などが講師を務める「住民参加プログラム」を展開、研修員たちの関心も高い。一方で、積極的に河川美化活動をしているのが一部の住民や団体にとどまっているのも事実。渡部所長も、流域環境に関して、大半の住民が行政や専門家任せであることを指摘する。
 「公共事業でもワークショップの手法が広がっているが、行政に頼りっぱなしの住民の意識はまだ変わっていない。これからは住民一人一人が自分の住む空間に責任を持つ時代。JICAの研修コースでも、地域住民を巻き込んだメニューをもっと増やしていく必要がある」

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例年応募が多い「地域流域環境コース」。研修員たちは母国での取り組みに生かそうと、水質などを熱心に調べる

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 行政だけでは流域管理が行き届かず、住民の力が不可欠な途上国にとって、住民参加をどう促すかは大きな課題だ。研修員たちも「生活に精いっぱいで環境保全どころではない住民の協力を得るのは夢のまた夢」とため息をつく。研修に参加しても、十勝での活動が途上国の施策に直接結び付かない例も多い。
 「国に帰って十勝と同じことをやってくださいと言っても無理。例えば、今十勝では、自然の豊かな川を求める傾向にあるが、住民の安全を考えれば治水は最低条件であり、過去に景観を無視した河川整備を行ったのも当然のこと。研修員には十勝の例を参考に、国の状況に合わせた最善策を考えてもらえればよいのではないか」
 人間と自然とがバランスよく共存する十勝の川。住民の生活を守り、やすらぎを与えるだけでなく、世界各国の手本となって地球規模で環境保全を推進する役目も担いつつある。世界と十勝の橋渡し役であるJICAの存在も今後ますます重要になりそうだ。渡部所長は語る。
 「帯広センターをもっと地域の人たちに活用してもらい、日常的に地元住民と研修員が世界の環境や国づくりについて情報交換できる場にするのが二十一世紀の目標。さらに広い意味での国際貢献・国際協力を目指したい」
(年間キャンペーン取材班=池田有紀)(00.12.5)




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