川、次世紀へ(3)

本来の姿への復元が課題


★多自然型工法★

官民の相互連携が必要

多自然型工法研究ネット事務局長
伊豆倉米郎氏

 一九九七年の河川法改正で、これまでの「治水・利水第一主義」だった河川行政に「多様な生物のすむ環境としての河川」という新たな視点が加わった。札内川や十勝川を抱える「清流王国・十勝」でも、この流れは脈々と動き始めている。そこで大きな役割を果たしているのが、これまでの防災機能を維持しながら自然環境を復元する河川工事の手法「多自然型工法」だ。

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「多自然型工法がこれからの川づくりには欠かせない」と語る伊豆倉事務局長

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 「役所が発注する工事を、業者がただやるだけだったのは過去のこと。これからの時代はそうはいかない。ノウハウを持っている土木業者が環境と調和した川づくりの一翼を担う。多自然型工法がこれからの時代は“普通の方法”になっていくと信じている」
 地元の工事業者六社で構成する「十勝多自然型工法研究ネットワーク」の伊豆倉米郎事務局長は「川づくりの未来」をこう語る。同ネットでは、帯広市を流れる売買川で管理者の帯広土木現業所と掛け合い、簡易魚道を設置する工事を実施。現在は浦幌町の幌岡で採掘後の土場を利用し、タンチョウなどの野鳥が飛来できる湿地の回復を目指した運動を開始、官・民を巻き込んだ「川づくり」を模索している。
 多自然型工法は従来の「三面張り」の護岸工事とは違い、コンクリートの上に土を盛るなど手間も金もかかる。しかしこの工法による自然の回復にはめざましいものがある。伊豆倉さんはその成果を語る。
 「人間が手を加えることで、逆に自然のもつ回復の速度が増すことが確認できた。今後の課題は、川を地域の歴史や自然に合わせた本来の姿に復元すること。そのためには川ごとに適した工法をどう加えていくか、綿密な計画と事後の調査が必要。(湿地ではなかった)十勝大橋付近にタンチョウがやってきてもそれは自然の姿ではない。川に魚道をつくっても、その上流の生育環境を整備しなければ『多自然』とは言い難い。一つ一つを検証しながらじっくりとやっていく必要がある」

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売買川での取り組みは、官民を巻き込んだ「川づくり」へのきっかけとなった
 ドイツやスイスでは河川などの自然破壊が進んだため、多自然型工法など自然保護のムーブメントができあがった。比較的自然が残る十勝で、川づくりの取り組みが進んでいるのは未来に向けた明るい材料だ。全国的に見ても、河川管理者や工事を請け負う業者、市民団体の意識は先進的と言える。しかし個々の活動がバラバラに点在している感は否めない。同ネットでも幌岡の湿原回復プロジェクトをめぐる地元との協議などで、この点を実感したという。伊豆倉さんはこう力を込める。
 「環境に調和した川づくりを今後も進めていくには、官と民、市民団体の相互連携は欠かせない。官民が一つになった大きな流れをつくり、十勝の川づくりを考えていきたい」
(年間キャンペーン取材班=金澤航)(00.12.1)




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