川、次世紀へ(1)

家畜ふん尿は再利用資源


★川と農業★

地域全体で循環型社会を

帯畜大・梅津一孝助教授

 北海道・十勝の河川環境を考える時、切り離せないのが、農業との関係だ。昨年施行された「家畜排せつ物管理法」も、ふん尿中の窒素に由来する川の汚染防止を目的にしている。道内の一級河川の全窒素濃度(河口付近)は、多くが一ppm(一リットル当たり一ミリグラム)以下。その中で十勝川は一・五ppmと他に比べて高い濃度にあるのは気掛かりな点だ。

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「循環型農業の推進は河川環境の維持につながる」と語る、梅津助教授

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 「濃厚飼料の輸入国の日本は、家畜ふん尿中の窒素の還元負荷量と科学肥料による窒素施用量の合計が(農地全体で平均すると)一ヘクタール当たり二百キロを超え、完全な“窒素過多列島”。その中で土地の広い北海道は、ふん尿を全耕地に還元すれば危機的状況ではない。ただ農業の大規模・集約化で局地的に流出している可能性は否定できない」
 帯広畜産大学の梅津一孝助教授(畜産環境科学)はこう指摘する。道立十勝農業試験場などの概算によると、管内の牛ふんに由来する窒素量は約二万六千トンにも上る。これを牧草地だけで処理するのには限界があり、広大な畑に還元する視点が重要になっている。ただ家畜排せつ物法の施行後、十勝でも「流さない」ための施設整備に偏るきらいがみられる。
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道環境生活部編・公共用水域の水質測定結果
 「ヨーロッパでは窒素汚染が深刻化したこともあり、きめ細かな規制(頭数制限、ふん尿散布量の上限、散布時期等)を定めている。これに対し日本の法律は“流さない”ということに比重を置き循環処理の観点が薄い。これでは農家のコストばかりが増え、本当の河川保護にはつながらないだろう」

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 梅津さんは注意すべきポイントとして、水系の汚染源は面的なものであることを強調する。汚染源は酪農・畜産を含む“複合的”なものだというのだ。実際、道内一級河川の全窒素量は、酪農専業地帯よりも十勝のような畑作・酪農の複合地帯の方が高いというデータもある。逆にいえば、牛ふん由来の窒素を畑に還元し、化学肥料に由来する窒素量を減らすことが課題といえそうだ。
 「乳牛一頭から排出されるふん尿の窒素、リンの量(年間)は一万二千円分の化学肥料に換算できる。百頭飼育していれば百二十万円。家畜ふん尿は廃棄物ではなく、“リ・ソース”(再利用資源)なのだということを認識するべきだ」
 最近、脚光を浴びる「バイオガスプラント」も、家畜ふん尿をエネルギー資源として活用する視点に立っている。デンマークやドイツでは脱原発の流れと合致し、同プラントの実用化が進んでいるが、日本国内では自然エネルギーの社会的位置づけさえまだだ。梅津さんは語る。
 「河川汚濁の問題を見る時、農家を悪者扱いするだけでは何の解決にもならない。自然エネルギーの利活用も含め、地域全体が循環型社会を考えることが必要ではないか」
(年間キャンペーン取材班=能勢雄太郎)(00.11.29)

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 十勝毎日新聞社の年間キャンペーン「水と緑の小宇宙」は今年、十勝の貴重な財産でもある“川”の可能性を、さまざまな角度から見つめなおしてきた。最終部では川を次世紀にどのように受け継ぐべきなのか−を、識者の提言を基に考える。




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