| 境界の風景[5] 第1部「心の病をめぐる日常」 |
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「結婚するとお互いの悩み事も相談できるし、病気にもいいと思う」。帯広市内の市営団地の中で、榎本秀教さん(41)は穏やかな目をして語った。共同作業所で知り合った妻の栄子さん(40)と結婚したのは3年前。精神病患者同士が結婚することは珍しいことではない。 秀教さんは毎朝、自家用車で出勤。月−金曜日の、朝から午後5時まで、市の委託事業として帯広ケアセンターが運営している帯広市リサイクルセンターに通う。仕事内容は使用済み瓶の色分け作業だ。 栄子さんは週2回、帯広ケアセンターに通うほかは、もっぱら家事に専念。近所のスーパーに買い物に行き、毎日自炊する。栄子さんは「家事はやっぱり大変です」とはにかんだ表情を見せた。 市営団地に住んでいると隣近所との付き合いもないが、差別も感じないという。 2人が出会ったのは共同住居の朋友荘。秀教さんが入居して約2年後に栄子さんが入って来た。よく話すようになったのは、当時大江病院が経営していた、シイタケ栽培の共同作業所で一緒に働くようになってからだ。「仕事をしているうちに、この人、いい人だなと思うようになった」と秀教さんは照れながら語る。
結婚には親族の反対はなかった。式は帯広神社で挙げた。市営住宅は抽選で当たり、身内が保証人になってくれた。 唯一問題になったのが家事。栄子さんは入院してからほとんど食事の支度をしていなかった。 2人の結婚を知った帯広ケアセンターが、栄子さんの仕事をボランティアと一緒に昼食を作る係にしてくれたため、メニューを覚えることができたという。 「共同住居より市営団地のほうがプライベートもあるし、格段にいい」(秀教さん)と、結婚生活は順調。毎日買い物へ行くという生活は「共同住居に住んでいたころはなかった」(栄子さん)。仲間とカラオケボックスに行くこともある。 2人の今の望みは、やはり「子供が欲しい」ということだ。(後藤一也)
精神病患者同士の結婚は破たんしやすいので良くないとする声もあるという。これに対して、帯広協会病院のケースワーカー、小栗静雄さんは「そんなことを言ったら、健常者の夫婦だってそうじゃないのかな」と笑う。 信頼できる人と一緒に暮らすことが病気にはいいのだろうか。 大江病院の坂井敏夫院長はこう語る。 「分裂病の原因は分からない。でも、ひとつだけ確信を持って言えるのは、孤立すればするほど病体は悪化する。心を開けば開くほど回復する」。
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