「揺れる大学問題」

[下]実現への道筋

市民合意が不可欠〜ツケ残さぬ論議に期待


「わが国唯一の光技術を専門とし、従来の学問領域を越えた融合教育、世界的水準の最先端技術の研究などが特色」。来年4月、千歳市美々に開学する千歳科学技術大学の設立準備財団・川端忠則管理課長は、こう説明する。

融合理工学部物質光科学科、電子光システム工学科の1学部2学科(定員240人)。事業費約98億円。民間から約13億円を集めた以外は市が事実上負担した。

大学設置の総事業費試算(概要) 単位:百万円
事業項目 学部学科規模 公設民営方式 公私協力方式
校舎等建設費
(設計/校舎建設/外構)
1学部1学科
1学部2学科
4,550
5,200
5,200
5,200
用地造成費
(用地取得費含む)
1学部1学科
1学部2学科
1,100
1,100
1,100
1,100
開学準備資金 1学部1学科
1学部2学科
550
300
600
350
初年度経常経費 1学部1学科
1学部2学科
550
500
550
550
図書・設備費
(図書/教具/校具/備品等)
1学部1学科
1学部2学科
600
550
650
600
 合  計  1学部1学科
1学部2学科
7,300
7,000
8,100
7,800

1991年度、市に大学設置推進本部が設置されてからは急ピッチに話が進み、議会から「市民合意を」と指摘を受けて92年度には市内の7カ所で市民の意見を聞く会合を開くなどPR活動に力を入れた。昨年9月議会で、大学に支出する補助金の債務負担行為69億円を可決、市民合意の手続きは完了した。

「大学はテクノポリス、拠点都市、総合計画などのまちづくりの流れに沿ったもので、設立構成メンバーに日本の一流企業が参画し、官民一体の体制が組めたのが大きかった。慶応義塾大学とのつながりも大きい」。21世紀型大学の誕生に関係者の胸は躍る。

9日と17日の十勝大学設置促進期成会(会長・高橋幹夫市長)理事会で、京都の瓜生山学園が十勝を含めた道内で芸術大構想を持っている計画が取り上げられた。しかし、正式なアプローチがないことを理由に高橋市長は「論議するのは不見識」と一蹴(いっしゅう)した。

理事の1人は「公私協力の大谷学園と瓜生山学園を比較したのではない。瓜生山学園は公設民営方式の走りとなった山形市の東北芸術工科大学に関係した学校法人。期成会構想は公設民営が望ましいとしているのだから、東北芸術工科大を具体的な材料として検討してもいいはず。『公設民営は実現が難しい』の一言で終わらすのは納得できない」と主張する。

また、経済人の1人は「少子化時代、大学が生き残るにはよほど特色がないと無理。つくればいいの発想ではなく、人が集まる魅力ある大学を実現しなければ、後世に大きなツケを残す」と懸念する。

19日の同期成会総会は25分で質問もなく終了した。出席者の1人は「こまでの経過で書いた紙1枚が配られて、詳しい説明がないのでは、その場で論議を−と言ってもも無理。いろいろな意見をもらう、せっかくの機会なのに、聞く姿勢がない。往復1時間かけて来た人もいるのに…」と事務局の姿勢に憤慨した。

帯広畜産大学は「畜大と協力、協調できる中身なら新大学はあった方がいいが、競合するのでは困る。大学は単に為政者や市が決めることではなく、多くの住民の声を聞き、オール十勝で論議をした方がいい」(地域共同研究センター所長・美濃羊輔教授)と提言する。

高橋市長は「期成会の論議を踏まえて市としての方針を出し、議会に提示したい」と言うが、公私協力の場合、総事業費70〜78億円のうち、市がどこまで負担するかは明確でない。

公設民営でも公私協力でも多額な市民負担が伴うことに変わりはない。市民合意どころか庁内論議すら欠いていた新産業ゾーン開発計画の失敗を再び繰り返さないためにも、しっかりとしたまちづくりの理念と市民合意を踏まえた冷静な判断が問われている。(政経部=小野寺 裕)おわり


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