勝毎ジャーナル
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被ばく後遺症に苦しむ里子たち

国土の30%が汚染

広島型原爆の500倍の放射能汚染を引き起こしたチェルノブイリ原発事故(1986年4月26日)から12年が経過した。事故当時の風向きで、隣接するベラルーシ共和国は国土の30%が汚染され、今もなお“被ばく後遺症”に苦しんでいる。被災児保養里親運動を展開している「チェルノブイリへのかけはし十勝」(荒木しう子代表)の里親たちは3月末、管内で保養した子供たちに会うため現地入りした。あの子たちは元気だろうか−。その思いが里親たちを駆り立てた。里親たちに話を聞きながら、放射能汚染地帯に踏み込んだ今回の旅をたどってみた。(社会部=鈴木斉)


通常の50倍の数値

里親訪問団は3月23日朝、ベラルーシ共和国の首都ミンスクのホテルを出発し、同国東側の汚染地帯に向かった。放射性物質セシウム137の測定数値が上がり続ける。子供たちが待つクラスノポーリエの林では、その数値は通常の生活空間の約50倍という1000カウント近くに達した。同訪問団に加わった安藤御史医師(帯広)は、そこで暮らす人々を思い、やり切れなさを感じていた。

チェチェルスクから約20キロ離れたクラスノポーリエに着いたのは同日夕だった。地区で唯一の診療所前には、十勝で保養した子供たちと親が到着を待ちわびていた。そんな中、訪問団の団長を務める池川昭博さん(57)=帯広・会社社長=は、95年夏に里子として1カ月預かった女児、マリーナ・パウリューコワちゃん(11)の姿を見て、思わず目を疑った。「3年前と何も変わっていない。この子は成長していない」。透き通るような白い顔が、心なしか力なく見えた。

写真1
池川昭博さん(右端)と八重子さん(右から3人目)は、成長していないマリーナちゃん(前中央)に驚いた(クリックすると拡大します)

そこには95年、96年と続けて池川さん宅に来たオリガ・ゴルバチョワちゃん(11)、96年に訪れたエカチェリーナ・ザイツェワちゃん(8つ)も駆けつけていた。この里子2人は背も伸び元気だった。特にオリガちゃんは池川さんの妻八重子さん(56)にぴったり寄り添い、手や体に触ってきた。その日はオリガちゃんの自宅に泊まり、ウオツカの歓待を受けた。


夢持てぬ子供たち

「成長が止まるのは、放射能の影響で遺伝子が破壊され、何を食べても栄養にならないため。この先いつまで体が持つのか。あの子たちには夢がない。夢を持てないんですよ」と池川さんは言う。

写真2
ベラルーシに健康な子はほとんどいない。この子は肺炎を患っていた(クレツク地区中央病院、写真・訪問団)

池川さんは20年前、当時小学6年生だった長男を病気で亡くした。その4年後、今度は中学生だった二女も同様に失った。会社を興して間もなくの出来事だった。「(里親を続けるのは)見えも何もかも外して、ただ子供たちを助けたいと思うから。でも本当は、自分が里子にすがっているのかもしれない」。池川さんの里親活動の原点がここにある。

あくる日朝、診療所前に里子と親たちが集まり、訪問団を見送ってくれた。オリガちゃんの目から涙があふれていた。マリーナちゃんとエカチェリーナちゃんはじっと池川さん夫妻を見つめていた。もう一度帯広に呼ぶためには資金が足りない。「これっきりかもしれないが、勘弁してくれ!」。池川さんは心の中でわびていた。


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