貴重な沼地に希少動植物
保護には市民運動手法も
「ここは小さな植物園のようなもの。まさに帯広の原風景だ」。北海道環境財団理事長で、国際湿地保全連合日本委員会会長の辻井達一氏は8日、チョマトー(西15、16北1周辺)を視察し、湿地としての自然環境の価値を高く評価した。
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「帯広の原風景」として保全への期待が強いチョマトー周辺
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発想の転換で生かして使う
道路直線化に伴うチョマトーの埋め立てについては「工事の結果、沼は形だけしか残らない。道路が曲がっているからといって、貴重な沼を埋め立ててまで真っすぐにするのは少し乱暴ではないか」と疑問を投げかける。都市化で消えつつある湿地や沼を守り、さらに「生かして使う」という発想の転換が不可欠という。
ただ、現在のチョマトーは植生にやや難があるというのが、辻井氏の見解だ。「見通しが良すぎて鳥類などの動物にとって安全な場所ではない」とする辻井氏は、新たに植物を植え込むなど、チョマトーを核とした周辺一帯の自然再生を提案する。いわば「原風景のスケールアップ」を図ることが、将来のチョマトーにふさわしい―としている。
その手法の1つとして辻井氏は「グラウンドワーク」を挙げる。同手法はイギリスで誕生した市民運動。「行政だけに任せるのではなく、周辺の住民まで巻き込んだシステムづくりが必要」(辻井氏)という。
登別では官民一体で湿原保全
湿地保全をめぐる官民一体の取り組みでは、既に具現化している登別市の例がある。同市若山町2の「キウシト湿原」(約4・5ヘクタール)。ここでは市と市民団体「ふるさと自然情報局」(堀本宏会長)が共同歩調で湿地を守る運動を展開している。
市の土地区画整理事業の区域内に同湿原が含まれていることを重く見た市民団体側が、現地で独自の環境調査に着手したことが保全運動の始まり。1997年ごろから市の担当者と協議、「湿原を残してほしい」という要請に市側も「保全への努力」を約束。昨年からは、86人の地権者に対する7年計画の用地買収が始まっている。
市民団体の堀本会長は「身近な自然に対して市民の声を聞こうという市の姿勢が強くなった時期で、こうした時代の流れが追い風となり、湿原保全をめぐり市側と対峙(たいじ)することはほとんどなかった」と話す。現地ではオオジシギ、エゾホトケドジョウ、ワラミズゴケなどの貴重な動植物が確認され、これらを守るという官民の共通認識が、湿原保全への具体的な取り組みを後押しした。
「行政側に聞く耳があっても、市民団体として説得できるだけの資料を持っていることが大切。調査能力のほか、自然を守るという強い意志をどれだけ持っているかが問われる」。堀本会長は最後に「サンダル履きで行ける身近な自然を子供たちに残すことができれば」と願いを込めた。
必要となる周知の工夫
これに対し、チョマトーの自然保護については、市のチョマトー埋め立て工事が「秒読み」となったことで、同沼の自然環境を守れという「市民の声」が高まりをみせている。
日本野鳥の会十勝支部のある会員は「市は予定している都市計画を分かりやすく周知してほしい。広報紙に大きな地図をつけて工事区域に含まれている自然環境を示すなどの工夫がなければ、市民が意見を挙げようがない」と指摘する。
帯広市の調査で、同沼には環境省のレッドリストで「準絶滅危惧(ぐ)種」に位置付けられているヤチウグイが生息していることが判明。十勝自然保護協会(安藤御史会長)は道東では非常に珍しいモノサシトンボを確認している。
チョマトー問題に関する市と同協会との話し合いが20日に初めて行われる。市と地権者の間で30年以上繰り広げられてきた交渉で、蚊帳の外だった「世論」が動きだし始めた。
(チョマトー問題取材班)(04.05.18)
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