シェフ 井出宏子さん (42)

◇体力勝負、努力する毎日◇

目指す女性増えるが結婚、出産で断念も多く

 髪を束ねてコック帽をかぶり、厨房(ちゅうぼう)に入ると表情が一変する。材料を入れると20、30キロにもなる大なべや大フライパンを振り上げる顔は真剣そのもの。「体力勝負でストレスもたまる仕事。休日はごろ寝でもして、しっかり疲れを取らないと勤まらない」と笑う。
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「せっかくの技能。十分なキャリアをつければ、結婚・出産してもまた復帰もできる。逆に復帰を望まれるくらいの女性が増えてほしい」と井出さん

 1960年帯広市生まれ。帯広北高卒業後、祖父の代からのレストラン「ホーム」に入店。最初からシェフを志していたわけではなく、油絵を描く美術家としての顔が主だった。しかし、数年後には料理人の魅力にとりつかれる。「お客さんの反応がストレートに返ってくる。お客が帰り、ソースまでさらった皿を見ると、思わず『やった!』と笑顔になる」と屈託がない。

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 業界関係者によると、力仕事のイメージが強いせいか、女性コックの歴史はまだ浅い。道内の西洋コックで組織する全日本司厨士協会北海道地方本部の女性部会(本部札幌、小林幸子部会長)によると、ホテルやレストランのオーナークラスで女性が増えてきたのはここ5、6年前から。同帯広支部(工藤一幸支部長)で女性会員はたった2人。
 井出さんがまだ厨房に入って数年目のころ、初めて来店した客に「あんな若いお姉ちゃんが作るの?」と不安そうに言われたことがあった。
 「心の中では『食べてから言ってよ』と思っていた。私は祖父や父のおかげで、自然とコックの業界に入っていけたが、まだ男性の業界であることを改めて実感した」と話す。

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 工藤支部長によると、コックを目指す女性は年々増えているという。ホテルやレストランのシェフ候補として入社するが、拘束時間が長いなどの理由で、結婚や出産を契機に、続けられず数年でやめていくケースが多い。
 実家だからといって特別視されることは全くなかった。皿洗いから野菜カットなど“下積み”も長く経験。調理全般を任された今も、オーナー(父智宏氏)の味を盗もうと、努力する毎日だ。井出さんはいう。「私はたまたま独身だが、仕事を続けられるかどうかは、パートナーの理解にかかっているかもしれない」
(佐藤いづみ)(02.6.11)

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 性別による職業の区分が薄れている。本来、男性の仕事とされてきた運転手やシェフなどの職に女性が進出しているほか、逆に女性的とされた保育や看護の場でも男性の活躍が目立ってきた。1999年には男女雇用機会均等法が改正され、法律面でさらに職業性別のボーダーレス化が進んできた。6月は男女雇用機会均等月間。かつては性別の色が強かった職場に風穴を開け、少数ながら奮闘する十勝の人たちを5回にわたり紹介する。



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