仕事に生かす

より学びやすい環境提供が課題


★畜大大学院特別選抜★
潜在需要も制度に壁


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職を辞して進学
 「グラフの赤い部分の関連性は」。担当の佐々木市夫教授の指摘に、一つ一つ答えていく。白糠町から二年間、帯広畜産大学に通ってきた瀬田俊志さん(59)の修士論文が追い込みに入った。
 道東の農業共済組合で獣医師として働いてきた。「ウルグアイラウンド以降、酪農家は収益を補うため多頭化で大量に搾る方向に進んだが、それとともに乳牛の病気も増えていった。このままでいいのか」。経営・経済の立場から酪農を見てみたい−それが職を辞してまで大学院に進んだテーマだった。
 畜大が大学院に社会人選抜枠を設けて七年。進学者は二十三人になる。共生家畜システム学講座の佐々木教授は瀬田さんを含む四人を受け入れてきた。例えば細川徹さん(40)=帯広市在住=は現職の農業高校教諭、池田農業共済組合の獣医師だった黒川俊男さん(75)=池田町在住=は「現職の時、いつも問題に解答をくれた」畜大に学びの場を求めた。

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佐々木市夫教授に修士論文の指導を受ける瀬田俊志さん。より高度で専門的に学ぼうと大学院を志す社会人が増えている
 人々の生涯学び続けたいという気持ちは、各市町村の高齢者学級の繁栄にも表れているが、選択肢は一般教養や趣味から、大学や大学院にも広がっている。さらに現役社会人が、仕事に生かす能力開発を求めるケースが増えてきた。
 管内のある自治体職員は「終身雇用制度が崩れ、現実問題として個人が知識、資格、実力を求められている。学ぶ必要性があるということ。我々自治体職員も、政策に理論がより要求され、確証がほしいという思いがある」と語る。
 細川さんも「教員仲間にも通いたいという人がいる。悩みを抱える先生たちは少なくない。潜在的な需要は多いはず」とする。

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教職員、企業に格差
 細川さんは仕事との両立が難題だった。「夜にゼミを開いてもらうなど先生たちにずい分配慮してもらった」。研究室に通う彼らを見てきた佐々木教授は「社会人選抜は入試制度が違うだけで、履修は一般の学生と同じルール。その点ではハードルが高いだろう」とも感じている。
 学校教職員については来年度、在職中の進学者のために休業制度ができる。その間は無給だが、職場復帰が可能な環境が整うわけだ。だが地元企業をみれば事情は違う。「不況で、企業はぎりぎりの人数しか抱えていない。業績に直結する保証がない限り、人材を数年間大学院に送るのは難しい」(佐々木教授)。自治体も「仕事に必要な内容であれば研修がある。むしろ大学院の側に制度を整えてほしい」(帯広市職員課)と見方は厳しい。

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大学の特化講座を
 一方、都市では需要に呼応して社会人を意識した大学院づくりが進む。道内でも北海学園大学の夜間や土曜の講座、小樽商科大学の札幌サテライトなどがある。少子化で淘汰(とうた)の時代を迎えた大学にとっては生き残り策でもある。
大学が受け皿を担っているとすれば、十勝のような地方は都市との格差から逃れられない。「通信制大学や、とかちプラザの放送大学学習室のように独学を支える資源も出来てきた。大学がないと駄目ということではないと思う。地方で一分野に膨大な需要は期待できないかもしれないが、少人数を対象とした大学の特化講座などは成り立つのではないか」(前出の公務員)。
 社会人の学びの場の必要性は広く認識されている。だが九八年に立ち上がった十勝地域リカレント教育推進ネットワーク会議は休止状態。社会人により学びやすい環境を提供する地域の教育力は十分とは言えない。
(年間キャンペーン取材班=福本響子・おわり)(01.1.8)

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