社会への入り口で

地域の担い手育てる地元企業


★企業と管内高校 インターシップ徐々に広がり★

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すぐ辞めてしまう
 内定を出したものの、就職は車の免許を取るための高校への口実で、免許を取ったとたん辞めてしまった」「美容師の華やかな外見だけにあこがれ、下積みに我慢できないばかりか、子供の親から経営者に苦情が寄せられた」
 管内企業五百七十六社の会員を抱える道中小企業家同友会帯広支部。帯広市東二南四にある同支部の事務局に最近、新入社員の態度について、悩みを打ち明ける経営者が増えている。家庭、学校という教育の現場を経てきたはずの新社会人。彼らにどんな変化が起きているのか。
 「“変わってきたな”と思うようになったのは四、五年ぐらい前」。地元の大手スーパー福原の清野範純総務部人事課長は新人の変化を痛切に感じている一人だ。同社の新人研修は徹底した発声練習やあいさつ、団体行動などを身につける厳しい内容で知られる。山と湖に囲まれた然別湖畔のホテル。抜け出す術もないこの場所から、四年前に初めて脱落者が出た。どこにでもいるような普通の若者、班別行動になじんでいないと思ったら、「学校みたいで嫌だ」と辞めるという。「だってお前、学校からでてきたばかりだろう」と説得しても無駄だった。

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新人研修ではあいさつやお辞儀など基本マナーを徹底的に指導する(昨年3月、帯広商工会議所主催の合同新人研修)
 「家庭でも学校でも何でも自由にやってきた彼らにとって、拘束されるという経験がない。嫌なことがあっても逃げれば済む。でもそれでは何も変わらない。この先もっと嫌なことがあっても乗り越えられない、次の職場でも通用しない」との言葉は、入社してまもなく辞めてしまった彼に届いたかは分からない。
 研修の脱落者が増えた一時期、清野課長は「時代遅れの研修なのだろうか」と悩んだこともあった。しかし、研修を乗り切った新人から「自分がこんなに声を出せるとは思わなかった」「ここまで頑張れるとは」という声を聞くようになり、「間違ってはなかったのだ」と勇気づけられた。
 「彼らは本当はできるんです。これまで彼らの可能性を引き出す場所がなかっただけ。限界にぶつかることがなかった。家庭も学校も企業も過保護に育て、責任を互いになすりつけてきた。今では逆にこの研修を続けたいと強く思う」

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教育は地域の問題
 同友会帯広支部では「共に育つ」という理念で一九七七年「共育委員会」を発足させ、入社まもない社員を企業合同で再研修したり、中堅幹部育成など企業の人材育成に努めている。山口敏文同委員長(帯広市民生活協同組合専務理事)は「親のしつけや、学校教育の問題が指摘されているが、企業にも人を育てる責任はある。大切なのは一人一人が自分の問題として考える“共感力”。教育は地域の問題、我々の問題として考える姿勢が必要」と言う。
 その取り組みが、教育関係者と企業の間で始まっている。管内六高校(浦幌、帯広工業、更別農業、清水、大樹、幕別)と同友会帯広支部や業界団体で協議会を設立し、インターンシップ導入の拡大と充実化を目指している。協議会が同友会帯広支部に依頼して調査した企業アンケートによると、約百社が高校生の職場体験を受け入れると回答した。

 アンケートを実施した同支部の石戸谷和政事務局長は「企業の反応は予想以上にいい。どの中小企業も厳しい経営環境の中、無償で受け入れようとしているのは、次世代の地域社会の担い手を育てたいという素直な気持ちの表れでは」と話している。
(年間キャンペーン取材班=酒井花)(01.1.7)

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