幼稚園の課外活動

東京・淡島幼稚園


★卒園児受け入れ、見守る★

地域の信頼得て地位確立


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サッカーや英語
 東京世田谷区、若者の街として知られる下北沢の閑静な住宅街にある私立淡島幼稚園。午後3時が近付くと、学校帰りの小学生が張り切って門をくぐる光景が見られる。「きょう、学校でこんなことがあったよ」−。園児と迎えに来た父母に交じって小学生の姿が見られる園内は大変なにぎわいようで、地域の祭りでも開かれているかのような印象を与える。
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 ここではこの10年間、園内でサッカー教室や英語教室などの課外活動を卒園児の希望者に開放、幼稚園での集団生活を卒園後も続ける珍しい幼児教育を実践している。
 園内で談笑する父母らと気軽にあいさつを交わしながら現れた加藤昌康園長は「子供は3歳までが母子密着期、その後9歳までが空想の世界で豊かな心を形成する“臨界期”といわれる。幼稚園は卒園後の子供の教育を小学校に任せるしかなかったが、臨界期を迎えるまで何とかして見守りたいと思った」と課外活動を始めた動機を語る。

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専任の講師や施設
 各コースには専任の講師陣を用意する熱の入れようで、英語は外国人2人が指導を担当。驚くことに、敷地内にはバレエの練習スタジオや造形用の窯まで整っている。
 卒園児は週1回、思い思いのコースで活動。サッカーでは青いユニホームを着て基本練習を重ねる姿が見られるほか、造形では好きな形に組み立てた段ボールに夢中で色を塗る子供たちのまなざしが印象的。活動時間は基本的に午後6時までだが、中には夜11時ごろまでバレエのレッスンを続ける中学生もいる。
 子供たちはそろって「立派な施設で、小さいころから一緒に遊んできた友達と過ごせるのが楽しい。ここに来れば、幼稚園時代の先生にも会える」と笑顔。加藤園長も「恵まれた環境の中で、多様な可能性を伸ばしてほしい」と目を細める。
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幼稚園時代の気心の知れた仲間とともに、課外活動のサッカーで汗を流す小学生たち
 元学習院初等科長・幼稚園長で淡島幼稚園の小野田三男副園長も「小学校教育では、低学年児童は高学年を意識せざるを得ない。幼稚園で教育を断絶してしまわず、小学校低学年を過ぎるまで温かく見守ってあげる試みは、子供の成長にとって必ずプラスになる」と指摘する。

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将来は生涯学習も
 卒園後も幼稚園に来てもらうという、現行の教育課程を逆行させるとも感じられる課外活動が定着したのはなぜか。それには、地域の父母がこのユニークな試みを好意的に受け止めている状況が大きく関係している。
 昔ながらの住宅街に囲まれているこの幼稚園では、親子2代の通園例も珍しくない。父母の間からは「近所には課外活動のメニューに似た教室もあるが、親しみの深い幼稚園の方が安心して子供を預けられる」との声が多く聞かれる。
 加藤園長は「子供を良く育てるには、大人の教育も必要。将来は、生涯学習のコースも始めたい」ときっぱり。その言葉から、開園50年の歴史を通じて築き上げた住民との信頼関係をよりどころに地域教育機関としての地位を確立しようという強い意志を感じた。(岩城由彦・おわり)(01.11.28)

 淡島幼稚園は、約400年の歴史を誇る森巌寺が経営母体。今年で開園50周年を迎えた。園児数は129人で、大半が近所から徒歩で通っている。課外活動の参加費は有料で、「市中の塾や教室と同じ程度」(加藤園長)。参加できるのは原則的に小学校3年生までだが、継続を希望する高学年児童や中学生も受け入れている。現在はサッカー、英語、バレエ、造形、教科学習の5コースを運営。約70人の参加者の多くは、地域にある10校程度の公立小学校に分かれて通っている。



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