中高一貫教育 【下】

岩手県軽米町


★「地元の声」聞き試験残す★

全国初、3教科限定で実施


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理想への過渡期
 「個人的には将来、入学試験はなくなっていく方向と思いますが、今は地元の声を大事にしたい。一気に理想へ近づくのは難しい。過渡期です」と、岩手県立軽米(かるまい)高校の二階堂南夫校長(58)が説明する。
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 音更町に最初に定住した大川宇八郎の出身地、岩手県軽米町。両町は姉妹都市関係を結んでおり、商店街には町産業まつりで音更町の物産販売を知らせるポスターも。
 マチの中心部からやや急こう配の坂を5分ほど歩いて上っていくと、町内中卒者の8割を受け入れる同町唯一の高校が見えてきた。
 県北端の1万2000人の町に、同県で初の地域連携型中高一貫教育が導入されたのは今春。この形態は全国で既に1999年度から導入されているが、連携関係を結ぶ中学から高校への学力試験を残すのは全国で初めて。来年度入学生を対象に、県の推薦入試日の来年1月24日、国語、数学、英語の3教科に限り実施される。

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勉強しなくなる
 二階堂校長が冒頭、大事にするとしている「地元の声」、つまり父兄らに根強い「入学試験がなくなると勉強をしなくなる」という懸念への配慮が背景だ。
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高校1年生の数学の授業では、中学校の教師も一緒に生徒の勉強を見る
 親は今回の制度導入をどう受け止めているのか。商工会が空き店舗を活用して設置した「街の駅」に、町PTA連合会長の堀米成嘉さん(44)=食堂経営=を訪ねた。
 「制度の趣旨はごもっともだが、いざ自分の子供に当てはめてみるとギャップがある。県から押しつけられた」と冷ややか。町民に十分な説明、理解がないままの見切り発車だったことがうかがえる。
 二階堂校長も「地域からのボトム・アップという形の導入ではなかった」と認める。「地域の理解を得るため、機会を見てPRに努めている。スタートした4月の時点よりはどうにか町の雰囲気も変わってきた」
 中学校にしてみれば制度導入で「進路指導が大きく変わるものではない」(中野繁軽米中校長)し、「高校存続を目的としない、既に出来上がっていた枠組み」(軽米町教委の小野寺一行指導主事)に、そのまま当てはめた制度とも言える。

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制度の主役は子供
 二階堂校長は「高校入試のハードルがあると、学ぶ喜びは得られない。何事にもメリット、デメリット、裏表があるが、主役は子供。プラス思考でいきたい」と静かに語った。
 1999年に200年に1度と言われる豪雨災害で、市街地を流れる雪谷川が大はんらんを起こした。改修が決まった川を舞台に町民の自主的な活動の輪も広がっているが、連携型中高一貫教育に関しては、地域に協力関係が広がるには、まだ時間がかかりそうだ。(井上猛)(01.11.20)

 1998年度に県教委が実践協力校に指定。2000年度に推進校として研究が進められてきた。同町には軽米、笹渡、小軽米、小玉川、晴山の5中学校があり、5校を合わせた98年度卒業生166人中139人が軽米高に進学。99年度は162人中137人で、83%から84%。2000年度はやや減少したものの、70%を維持している。数学・英語教員の中高相互派遣により、成績が伸び悩んでいる生徒へのTT(複数教諭による指導、チームティーチング)、部活動の合同練習、学校行事などで連携を図っている。



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