中高一貫教育 【上】

宮崎県・五ケ瀬中等教育学校


★「知力プラス情緒」を育成★

全寮制で1学年40人が学ぶ


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「自立心、社会性も」
 「私立の一貫教育では6年間で習うべき内容を5年間に前倒しする。受け身のテストには強いが、議論を交わし、自ら判断する訓練はされていない。ここでは勉強もさせるが、自立心、社会性も学ぶ。知力プラス情緒の教育が狙いです」
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 宮崎県北西部の九州中央山地。標高600メートルの自然あふれる学びの森に全国で初めて設置された県立五ケ瀬中等教育学校。そこでは中学生から高校生まで、幅の広い異年齢集団が生活を共にしながら主体的に生き抜く力をはぐくんでいた。
 隈元正行校長(54)が途中で入試のない6年間の教育効果について説明を始める。木をふんだんに使った落ち着きのある校舎が心地よい。
 続けて「総合的な学習のフォレストピア授業では、3年生と6年生のときに小論文を書きますが、そのためには興味を持ったものに自ら挑戦する姿勢を持たなければならない。それが自分の将来像を描くための力となり、それを実現させるべき“手段”としての進学につながるんです」と、分厚い論文集を指し示した。

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ハウスマスターと呼ばれる教諭が、生徒と生活を共にしながら夜の学習を手助けする
テレビのない生活
 午後6時すぎ。学校に隣接する寮では、部活動を終えた生徒たちが食堂で夕食を取っていた。このときが、平日に唯一許されるテレビの時間。Jリーグの結果を伝えるニュースに、男子生徒のはしも止まりがちだ。
 食事を終え、午後10時までは勉強時間。時には先輩が先生役となって後輩を教えたり、ハウスマスターと呼ばれる寮に住み込みの先生らが生徒の様子を見守ったりする。
 テレビのない生活に慣れたという高校2年生の竹田沙織さん、川崎聖子さん。「高1になった途端、宿題の多さに驚いた。やらざるを得ない状況です」と明るく笑う。自ら洗濯、アイロンがけもこなす。
 中高一貫教育で親の懸念は「勉強をしなくなる」という点に集約されるが、一定程度以上の学習量は確保されており、それが東大をはじめ有名国公立、私立大学への入学者を送り出す結果となっているようだ。
 別の高校2年生は「子供と接するのが好きなので小児科医」(佐藤春介君)、「植物の培養など試験場で働きたい」(河野平君)と即答が返ってくる。自分の道をしっかりと見定めた「“目的”ではない大学進学」を見据える。

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教師の質向上も
 同校には30人を超える教諭がおり、中学校の先生が高校生に教え、逆も行われる。隈元校長は「互いの教科書を知ることで教え方の勉強にもなる。この学校を県の研修センター付属学校と位置づけ、県内の小・中・高の教師のレベルアップにも活用を期待している」ともう一つの狙いも話す。
 少数精鋭のため「公立のエリート校」との指摘もある。同校の自己評価を尋ねると、隈元校長は「今の生徒が卒業して社会に出る10年ぐらいたったときに見てみたい」と猶予しながらも、表情には確かな自信ものぞいていた。(井上猛)(01.11.19)

 開校は1994年。中高一貫教育が学校教育法の改正で正式に認知される5年前。県が推進するフォレストピア(森林理想郷という意味の造語)構想の一環で、63億円を投じて校舎、こだま寮などを整備。1学年40人で、全県から小学校長の推薦を受けた児童が面接、適性検査で入学。来年度からは最終段階で実施していた公開抽選をやめる方針。縦割りでつくる7、8人のファミリーによる活動も特徴。

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 年間キャンペーン「とかち教育新世紀」第5部では、教育の新しい形への挑戦や教育を変えていこうとする先進的な全国の事例をルポする。学校教育自身が、また学校と社会が、これまであった垣根を取り払おうとする「接続・連携」の姿を6回シリーズで紹介する。



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