十勝毎日新聞
KACHIMAI
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現代に問うアイヌ民族の精神性

本社記念事業と連動し多角的に分かりやすく

生活様式に学ぶとは?

十勝毎日新聞社創刊80周年記念事業の目玉となる「アイヌの四季と生活−十勝アイヌと絵師・平沢屏山(ひらさわ・びょうざん)」展(道立帯広美術館で7月2日開幕)を控え、編集局社会部は4月末から「神々の恵み」と題する連載企画を展開しています。 アイヌ民族の生活と文化、精神性に改めて目を向け、現代に生きる私たちの生活を問い直そうというのが連載趣旨。先住民族を多角的に取材、記念事業と連動した“立体的”な報道です。


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好評なシリーズ「神々の恵み」
アイヌ新法の制定から2年がたち、国連が1994年に定めた「世界の先住民族の10年」の折り返し期を迎える中、社会部は「アイヌ民族」への理解を深める企画記事を検討。 同展と連動させることで開催意義を浮き立たせると同時に、自然と共生していたアイヌの生活様式に学ぶことは何か−を基本理念に据え、十勝の環境と文化の源流にある彼らの生活・文化をより深く取材し、読者に改めて先住民族について考える素材を提供しようと、連載を開始することにしました。
4月30日付紙面からスタートした第1部「大地(モシリ)」では、アイヌ語と管内の地名の深いつながりや、十勝アイヌの拠点だった広尾、伏古コタン、聖地チョマトーの歴史、伝説などを紹介。第1部終了後は、佐藤いづみ記者が胆振管内白老町の「アイヌ民族博物館(ポロトコタン)」を訪ね、民族の暮らしや文化の伝承に努め、研究機関としても充実している同博物館を取材しました。
佐藤記者が担当した第2部「白老から」は、同博物館の“存在意義”を多面的に分析、施設の観光と伝承の相反する部分などにも目を向け、5回にわたって掲載しました。
26日から始まった第3部では、社会部記者がアイヌ料理を実際に作って食べたり、神事に使うイナウ作りに挑戦するなどし、実体験を通してアイヌ文化や生活を分かりやすく伝えています。
7月2日から28日までの同展開催期間中も、出展品の紹介や関連イベントの記事化を計画。併せてアイヌ民族の精神性に焦点を当てた記事展開も考え、引き続き多角的な取材活動を進めていく方針です。 (鈴木 斉)


地名とのかかわり、白老の様子〜視野に広がり持った
【社会部=佐藤いづみ記者】

「アイヌ民族の生活や文化を改めて見直すような連載企画を長期で行いましょう」と、社会部長から提案されたのが2月末。アイヌ民族関連の担当記者だった私と、文化記者など3人で取材班を組みました。メンバー中、1番若手の私への試練か、部長から企画書の作成を命じられましたが、私自身、昨年6月に担当になったばかり。深い知識があるわけでもなく、とにかく本を読みあさり、アイヌ民族の古老の方々や学芸員などに話を聞きながら勉強を始めました。
取材を進める中で興味深かったのは、アイヌ語と地名とのかかわりでした。道内地名の九割はアイヌ語が由来ですが、地名が極めて合理的に付けられているのには驚きました。例えば「長流内(音更)」。語源はアイヌ語の「オサルシ・ナイ」で、川口の近くに葦(あし)が密生した場所があったことを意味します。地名の合理性は、アイヌの人たちが厳しい自然と共存して生きていく上で必要だったのでしょう。
また、白老町への出張取材は2泊3日で5回の連載記事(6月9−17日既報)を書くという強行スケジュールでしたが、私にとって大きな財産になりました。これまではどうしても、アイヌの人たちを取り巻く諸問題において、十勝という狭い視野でしか物事を見ることができませんでしたが、アイヌ文化の伝承面で先頭を走っている白老の様子を知ることで、十勝が抱える問題などを自分の中でも整理することができ、スムーズな形で記事化できたと自負しています。
体験では、ウタリ協会の女性の方に協力してもらい、アイヌ料理作りに挑戦(26日からの第3部企画で紹介)。指を切ったり、足りない材料を店で買いに行っている間にほとんど料理が完成していたという情けない状況で、料理の基礎を学んだという感じでした。しかし、ふだんは人の話を聞いて文章にすることが多い私にとって、自分の舌で感じたことなどを記事で書けたことは新鮮でした。
アイヌ展のスタートまであとわずか。今回の連載企画が、「なぜ今、アイヌ民族の生活や文化を見直すべきなのか」をひとりでも多くの読者に問いかけるきっかけになってほしいと願っています。(99.6.27)


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