ダイオキシン汚染の恐怖
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脇本教授に聞く(下)


ダイオキシンは何から発生するのですか。

最初にできたのは農薬の不純物としてでした。特に245Tといわれる森林用除草剤に入っており、北海道でも使われたかも知れません。使用禁止になり全国35カ所で埋設されました。水田で多く使われたCNPやPCP除草剤も代表的です。それから塩素を持った物を焼却すると実に簡単にできる。400度くらいで燃焼すると210種のダイオキシンが全種類できます。どんな焼却炉でも発生します。もう1つ大きいのが塩素を使った殺菌漂白。漂白剤廃液を川に流すと川でもできます。あとはこの3つの変形です。

日本中どこからでも発生するということですね。

塩素系の化合物はもともと自然界にはありませんから、体内でも体外ても壊れずに残ります。脂溶性が高く、最終的には生物の脂組織に濃縮されてくる。人工有機化合物は壊れないから腐らないというメリットがありますが、デメリットを見忘れ、処理をいい加減にしているのが問題なのです。

先生は空気中から降下してくるダイオキシンを数字にして初めて発表されましたね。

ここ(愛媛大学農学部=松山市樽味)で測定しましたが、1平方メートル当たり1年間で3.3ナノグラム落ちてくる。日本列島全体で1・7キロになります。ベトナムでは10年間に170キロ、1年で平均17キロまかれてますから、毎年ベトナム戦争の10分の1くらい落ちていることになります。松山は低い方で、大都市はこの何倍か高いでしょう。こういう状態で汚染が進行しているのが実態です。何の規制もなく膨大な量が出ているのです。
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研究室のダイオキシン測定器を操作する脇本教授
健康への不安が強まっています。

発がん性のレベル以下で発育期の子供のホルモンかく乱を起こすとしてアメリカも重要視しています。医者に聞いた話ですが、東京でもベトちゃん、ドクちゃんと同じような赤ちゃんが生まれたそうです。産婦人科の先生はとうに今の出産異常を感じておられます。日本でも無脳症の奇形児は直線的に増えています。起こっても不思議ではありません。

日本人自体が相当汚染されているということですか。

ベトナム人は体の脂肪1グラムに百〜数百ピコグラム(1ピコは1兆分の1)のダイオキシンが入っています。日本人も私が大阪と松山で継続的に調べているものでは2百ピコグラムになってます。日本全体の平均では百ピコグラムになっているでしょう。世界一になります。ベトナム人はゆっくり減っていますが日本人は、何の対策も取られておらず増え続けています。厚生省の調査は出そうなものを調べていないからです。

警鐘を鳴らして18年経ちますが、やっとここまできたという思いです。しかし、日本人は少しずつの変化に非常に鈍感です。灰色の段階での決断が弱い。今、手を打つのが行政の仕事です。“黒”になってしまうと引き返せません。業界、行政の理解が欠かせません。

魚ばかりでなく日本そのものがギリギリの段階にきていることがよく分かりました。 (おわり・夏川憲彦)

◆これで第一部を終わります。ダイオキシンに関する調査や取材はこれからも続けます。ご感想、ご意見をお寄せください。(年間キャンペーン取材班)


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