ダイオキシン汚染の恐怖
−8−

脇本教授に聞く(上)


猛毒ダイオキシンが、私たちの周囲を汚染しはじめている実態が明らかになった。最も詳しい研究者の一人として知られる愛媛大学農学部の脇本忠明教授(56)に、毒性やわが国の汚染レベルなどについて聞いた。

ダイオキシンはどんな毒性を持つ物質なのですか。
photo

今まで分かっているすべての毒素を持っている毒物と言えます。しかもそれが全部微量で影響を与えるのです。モルモットのLD50(試験動物が半数死ぬ薬物量)は体重1キロ当たり0.6マイクログラム(TEQ)です。1グラムの千分の1が1ミリグラム、その千分の1が1マイクログラムです。普通は3〜30ミリグラムで毒物扱いになります。青酸カリの1万倍の急性毒性があるといえます。

ベトナムの奇形児もダイオキシンが原因と言われてますね。

急性毒性のほか、慢性毒性、エイズのようになり風邪でも死んでしまう免疫毒性、従来はないとされていたが今はあるともいわれる遺伝毒性、発がん性、生殖発生毒性があります。ベトナムの実態も研究しているがすごい、としか言いようがない。流産は全部奇形児です。考えられる奇形がすべてあります。男性の生殖機能がやられ、相手の健全な女性も流産の後、がんになる例が増えています。

人間の許容量はどの程度でしょうか。

動物実験で奇形が発生していないノンエフェクト・レベルは体重1キロ当たり1日1ナノグラム(10億分の1グラム)です。WHOあたりはこの百分の一を人間の基準としており、厚生省も昨年6月28日、耐容1日摂取量(TDI)を体重1キロ当たり10ピコグラムとしました。ドイツは1ピコグラムです。アメリカはさらに厳しく今の0.1を0.01ピコグラムにしようとしています。

日本はどんな状態にあるのですか。

何を食べても1〜2ピコグラム入っていますが、魚からの影響が大きい。魚を1日平均して百グラム食べれば百ピコグラム入ってくる状況です。魚から入るのが5倍になれば、体重50キロの人のTDIにかかります。魚は今ギリギリのところにあり、これ以上汚染されたら食べられません。北海道は別ですが、既に大阪湾や東京湾のものは9倍とか10倍のものが出ています。

アメリカやカナダは乳製品から出ています。牛を放牧するところに肥料として焼却灰をまくと一気に乳製品にダイオキシンが入ります。子牛の奇形も出始めています。牛は外で飼いますから環境が汚染されると一番最初に影響が出ます。ごみ焼却灰の管理が重要です。(つづく・夏川憲彦)

<TEQ> 写真=脇本忠明氏=

ダイオキシンは210種類あるとされ、最も強い毒性を持つのが「2、3、7、8四塩化ダイベンゾダイオキシン」と呼ばれる物質だ。これを基準にして、ほかの異性体の毒性も換算した値がTEQ=毒性等量=で、ダイオキシンの研究では広く用いられる。

愛媛大学農学部教授。農学博士。環境計測学専攻。19年前からダイオキシンの研究に取り組む。昨年、都市や家庭のごみ焼却炉で発生したダイオキシンが、雨やちりと一緒に地上に降下していることを初めて確認、発表した。国内の年間降下量はベトナム戦争で1年間に使用された枯れ葉剤に含まれる量の1割近いと推定している。

・戻る