ダイオキシン汚染の恐怖
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埼玉県・くぬぎ山(下)

「マンションの上から見ると、煙の帯が所沢の上空を覆っているんです」「これだけ運動をしていても、(産廃の)焼却量は増えている」。1996年12月。「止めよう!ダイオキシン汚染」さいたま実行委員会が所沢市内で開かれた。集まった20人は、何時間も議論を続けた。運動を広げ、さらに認識を高めること、お母さんたちの母乳のダイオキシン調査などが今後の活動案に挙がった。
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ダイオキシンを出さないことが、一番の公害防止策。会議終了後も熱心に話をするさいたま実行委員会のメンバー

「くぬぎ山」のある三富新田地区は、古くから農業地域として知られ、現在も野菜栽培が盛んだ。しかしダイオキシン問題が注目され始めてから、ホウレンソウなどが売れなくなってきた。実は「くぬぎ山」の名称は、三富の地名が出て農産物のイメージが下がらぬよう配慮して、住民たちがつけた名前なのだ。

実行委員会事務局長の下羽初枝さんは説明する。「林を所有しているのが農家。金銭的な事情から、産廃業者に土地を売ったり貸したりしていることが多い。それだけに農業者は声を上げにくいんです」。

この地域は茶の産地としても有名。狭山茶の名前は全国に広がっている。実行委員の1人でライターの佐藤篤子さんは「狭山茶の業者さんが、“ダイオキシンが出る出ない以前に、狭山ブランドの失墜が怖い”とおっしゃっていた。生産者に運動に入ってもらうことが重要だと思う」と話す。

さらに、実行委員会が危機感を強めていることがある。汚染地域の広がりだ。「所沢市の西端に関越自動車道が通っていて、インターチェンジがあるんです。その近辺も最近焼却炉が増えていて、状況がひどい」と委員の1人。高速道路を通って、処分場が不足している都内から、産業廃棄物が流入しているという事実がある。

県の「環境白書」96年版でも産廃の搬入、搬出の両方があると認めた上で「把握については困難を極めている」としている。「埼玉県からも流出している点が弱い。でも自県内での処理を原則としていかねば」と実行委員たち。

埼玉県で今起こっていること一つ一つが十勝への警鐘でもあると感じる。基幹産業である農業への影響、人体に及ぼす害は静かに、しかし深く進行しているのかもしれない。さらに他府県の廃棄物の流入という問題。道は「産業廃棄物の処理にかかる指導指針」の中で「埋め立て処分目的の産廃を道外から持ち込むのは禁止」と規制をかけている。しかし、法的なものではなく、限界がある。

「もう産廃を燃やすのはやめてほしい。のど元に突きつけられないと分からないのならば、一度日本中ごみだらけにして、それから考えればいい」。「くぬぎ山」隣接地に住む小谷栄子さんのつぶやきが痛切に響く。 
(つづく・福本響子)


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