ダイオキシン汚染の恐怖
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埼玉県・くぬぎ山(中)

「高濃度のダイオキシンが検出された!」。1995年12月。摂南大学教授、宮田秀明さんが1月に行った「くぬぎ山」周辺の土壌調査の分析結果が公表された。焼却炉近辺、約10カ所の土壌から検出されたダイオキシンは、1グラムあたり140ピコグラムから556ピコグラムという高い値を示していた。

さらに「くぬぎ山」から南に4キロほど離れた所沢市内、航空記念公園内の2地点からは、土壌1グラムあたり93ピコグラム、104ピコグラムのダイオキシンが検出された。
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ダイオキシン汚染を訴える実行委員会などの印刷物、所沢市の広報「情報館」も特集を組んだ

住民が受けた衝撃は大きかった。ドイツの基準では100ピコグラムを超えた場所は児童の土壌接触を防ぐため、土の入れ替えや覆土という対策を取ることになっている。「市民の憩いの場で、子供たちが遠足にもやってくる公園です。ここがドイツならば、子供は立ち入り禁止ということになってしまうんですよ」(下羽初枝「止めよう!ダイオキシン汚染」さいたま実行委員会事務局長)。

住民百人以上が集まって緊急集会を開き、同実行委員会を立ち上げた。下羽さんは言う。「調査してみたら、くぬぎ山から南に向かって風が吹く日が年間の3分の2。所沢市街にダイオキシンが広がっている危険があるのです」。

96年5月1日、所沢市の住民らから、県の公害防止条例に基づくダイオキシンなどの調査請求が出された。土屋義彦埼玉県知事も調査に前向きの発言を行い、一気に県が走り出す。

96年度の補正予算。県議会は「ダイオキシン汚染実態調査費」として調査費3,085万円、分析機器購入費7,300万円の拠出を可決した。県独自に調査を行うことが可能になったのだ。大気、土壌、水質などについて産廃集中地域から半径2キロ圏を中心に調査が行われた。焦点のダイオキシンについては年度内に分析結果が発表される見通しだ。

しかし県の調査はあくまでも一般環境調査。ダイオキシンの発生源を突き止めることにはならない。産業廃棄物処理場の焼却炉の煙自体を調べることはできないのか・・・。

県の窓口になっている環境部環境政策課では「“因果関係を明らかにするためには調査すべき”との意見もありましたが、調査はしないと結論しました」(野口政一主幹)。

理由は「業者が応じなければ調査は不可能」、さらにダイオキシンの発生を予防するために「独自の規制をかけられないことはないが、業者は確実につぶれるでしょう。合法的にやっているにもかかわらず」。

そこには苦悩が見える一方で、自ら限界線を引いてしまう行政の姿勢が浮かび上がる。その姿勢が勝る限り、問題は生まれ続ける。これは十勝にとっても、決して他人事ではない。

「だからこそ私たちが主張し、行政に立ち向かっていかねば」と下羽さん。分析結果が出たとき、県は次にどんな手を打てるのか。出口はまだ見えない。
(つづく・福本響子)


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