潜むダイオキシン十勝の現状
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農業用廃プラスチック

「ダイオキシンが話題になる中、学校でも焼却炉の廃止でごみを燃やせなくなったのに、家でプラスチックを燃やしていては子供たちにどう説明したらいいのだろうか」。農業用廃プラスチック(廃プラ)の一つ、肥料袋の回収に十数年前から取り組んでいるJAかわにし青年部。井上浩二部長は廃プラの適正処理をこう訴える。

今年も8月下旬、約500戸から大型トレーラー数台分に相当する約50トンの肥料袋を集めた。「肥料袋はきちんと収集されていると思う。でもほかの廃プラは農協や市が呼び掛けても、なかなか集まらない」と井上部長は危ぐする。
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農業用廃プラの適正処理は農家の意識が不可欠になる。肥料袋を回収してトレーラーに積み込む農協青年部の部員たち(今年8月、帯広市)

農業用廃プラの適正処理が遅れている。十勝支庁の調査によると、管内の使用量約5,000トンのうち、処分場での焼却や再利用などの適正処理率は12.2%。残る8割強が農家段階での焼却か埋め立てによる「自家処理」とされる。

ダイオキシンの発生源になる塩化ビニールは、使用量の4.5%と少ないものの、適正処理されなければ猛毒の発生源になりかねない。十勝毎日新聞社の母乳調査では農家の女性1人からダイオキシンの一種「ポリ塩化ジベンゾフラン」を通常より高い濃度で検出した。フランはビニールなどを燃やすと多く出る。この女性は周囲の農家がビニールを燃やしているのを見ており、検査した摂南大の宮田秀明教授は「フランの検出は野焼きと関係があるのではないか」と分析する。

自家処理が大部分を占める要因は、廃プラを回収に出すには手間がかかることが挙げられる。肥料袋は1戸当たり年間2,000枚に上るほか、「畑の被覆資材などは畝(うね)の長さに合わせてあるので、たたんだりする整理作業に時間がかかる。回収場所に持ち運ぶには重く大変」という声が農家から聞かれる。さらに処理費用が輸送費を含めると1トン約3万円かかり「お金出してまで」との考えに結びつく。
農業用プラスチック

塩化ビニール系とポリエチレン系の2つに分類される。主な用途は、ビニールハウス、畑の地温向上で使われる被覆資材、飼料作物用ラップフィルム、肥料袋、農薬瓶など。

このため市町村や農協は処理費用の3分の2を支出し、農家負担の軽減で回収率を高める対策を取っている。豊頃町や本別町は独自の焼却処理施設を建設、町内で処理できる体制を整えた。徐々に支援体制は整いつつあるが、自治体によって回収率は低い。十勝支庁農務課農産係は「農業生産で排出された廃プラは、産業廃棄物の取り扱い。自家処理は廃棄物処理法で違法行為になることが理解されていない」と分析する。

また、廃プラの資源化が困難で、価値をなくしていることも関係している。ほかの資源ごみと同様に市況が低迷している上、すべての廃プラ資材が再利用されるものでもない。利益を生まない廃プラは結局、後回しの存在となり「啓発活動に力を入れていくしかない」と同支庁農産係。農家の自助努力が回収率向上のカギを握っている。

ただ、近年の製造物責任の高まりを背景に、プラスチック利用者の処理費負担だけでなく、販売側の協力を求める農業関係者の声もある。資材に処理費を上乗せして販売し、回収時に払い戻しされるデポジット方式。農家から廃プラを受け取った販売者も、この方式の運営組織に渡すことで換金、廃プラが流通する。かつて十勝でも検討材料に上がったことはあるものの、組織の運営など問題を残して実現していない。

プラスチック資材は、農産物価格の低迷が顕在化する10年ほど前、生産性を上げるために本格的に普及した。例えば、野菜はビニールハウスで春早いうちに育苗しなければ、端境期の出荷に間に合わないため、市場の評価を得られなくなる事情がある。

ある農協の指導担当職員は危機感を募らせる。「プラスチックは生産性向上には便利な物。だが、一歩間違えば逆に産地を傷つけかねない」。廃プラ処理は、厳しい競争環境に置かれる農業の生産追求と、資材に隠れた負の素質との板挟みになっている。(年間キャンペーン取材班=児玉匡史)


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