潜むダイオキシン十勝の現状
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十勝の母乳調査(下)

管内に住む母親15人の母乳に含まれるダイオキシンを十勝毎日新聞社が調査した結果、初産者の平均で10.4ピコグラム(母乳中脂肪1グラム中)が含まれていることが分かった=前回参照=。そのうち、ある母乳に特徴的な傾向が表れていた。十勝の典型的な農業地帯に生まれ、ずっと同じ場所に暮らしている1人の母乳から、ほかの14人には微量しか出ていない種類のダイオキシンが極端に多く検出された。
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産婦人科の新生児室で眠る赤ちゃん。この子たちの健康を守る責任は、私たち一人一人にある。

ダイオキシンと一般的に呼ばれる物質は化学的には3つに分けられ、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(ダイオキシン・PCDD)と、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーPCBを合わせてダイオキシンと呼んでいる。

ところでその母親の母乳には、フランがジオキシンよりも多く入っていた。ほかの母乳に含まれるフランはジオキシンの数分の一から十数分の一でしかない。

「このパターンはダイオキシンの発生源と関係があるのでは」と、全国の汚染実態を調査している摂南大学薬学部の宮田秀明教授はみる。フランを多く含む空気の汚染が原因という見方だ。その指摘通り、母親は家のそばの家庭用焼却炉でプラスチックトレーやビニール袋を日常的に燃やしており、その煙が家に入ってくることもあるほか、周囲の農家もビニールを野焼きしていた。

この例を除けば、多くの人は食品からダイオキシンを体内に取り込んでいる。「人間が摂取しているダイオキシンの98%は食物経由で、そのうちの60%は魚介類経由」だと宮田教授はいう。特に工業地帯沿岸で取れるサバ、イワシ、アジ、ハマチなどのダイオキシン濃度は高く、遠洋魚や白身の魚は低い傾向にある。北海道でよく食べられるサケ、ホッケ、サンマ、カニなどは低いようだ。「濃度が低い傾向の魚を選んで食べることで摂取量をかなり減らすことができるはず」

また、汚染物質を体内から排出する作用のある食物繊維が、ダイオキシンにも有効なことが分かってきた。福岡県保健環境研究所はネズミでの実験で、米ぬかや野菜に含まれる食物繊維がダイオキシンを体内で吸着し、ふんの中に排出することを明らかにしている。食べる魚を選び野菜を多く取るなど食生活の改善でこれからの摂取量は減らせるかもしれない。

だが問題なのは、体内で排出されずに残ったダイオキシンは体内の脂肪組織に少しずつたまり、初産の母親が1年間母乳を出すと、体内蓄積分の60%を排出するということだ。その分は飲んだ乳児の体に入る。母乳を飲ませるべきなのか、やめるべきなのか。

宮田教授は人工乳で育てても問題がないと前置きしながら、折衷案を示す。「科学的根拠はないが母乳を飲ませた方が病気になりづらいとはいわれている。最初の3カ月母乳を飲ませたあと人工乳にする方法が現実的では」という。厚生省の検討会は感染症防止効果、精神的発育などの面からダイオキシン問題を踏まえた上で母乳育児を推進している。助産婦、看護婦の立場から母乳育児の大切さを強調する自然育児相談所(東京都中野区)の山西みな子所長も「子供の丈夫な体質を作るためにも母乳を飲ませるべき。それより母親の高タンパク、高脂肪の食事の方が問題」という。

現時点では、母乳育児を勧める声が多い。その一方、母乳にダイオキシンが含まれていることも事実だ。社会全体でダイオキシンの発生を防ぐこと、個人がごみの分別、食事の見直しなど生活改善をすることから始めるべきではないだろうか。(年間キャンペーン取材班=山本薫)


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