−1− 今年の年間キャンペーン最終部は、十勝毎日新聞社が独自に調査した、十勝管内に住む母親の母乳に含まれるダイオキシン量についてまず報告する。この分析結果を基に十勝の実態を把握した上で、取り得る対策などについても考えていきたい。
十勝の母乳に含まれるダイオキシン濃度は、日本の中では低い方だった。秋田、仙台と同程度=表2=にあり、世界各国の数値と比較すると=表3=、先進工業国よりは発展途上国に近い数値だと言える。 前回の記事で母乳を提供してくれる母親を募集したところ、予想を上回る38人の応募があった。応募の動機としては「ダイオキシンが母乳の中に入っているなんて知らなかったから、不安になった」という声が多く、実態の分からぬまま母乳を与える母親たちは不安を感じているようだった。 応募者の中から帯広市ほか9町1村に住む母親15人の母乳を集め、分析を国内で高い実績のある島津テクノリサーチ(本社京都市)に依頼した。分析結果の検討には、摂南大学薬学部(大阪府枚方市)の宮田秀明教授に参加してもらった。 母乳から検出されたダイオキシン量を、まず初産者の母乳でみる。十勝の8人の平均値は、母乳中の脂肪分1グラム中に10.4ピコグラム(ピコは1兆分の1)だった=表1=。ただ個人差は最低で6.1ピコグラム、最高で18ピコグラムと3倍の開きがあった。 10.4ピコグラムという数値を、分析した島津テクノリサーチは「日本の平均は約20ピコグラムと考えられ、十勝は全般的に低いといえる」という。宮田教授も「都市部や工業地帯よりは低い。日本の中でも低い傾向にあるのでは」とみている。 だが、ダイオキシン量の見方にはもう一つ、人間が一生摂取しても健康に害がないとされている、耐容摂取量がある。厚生省はこれを体重1キロ当たり1日に10ピコグラムとしており、例えば5キロの乳児では50ピコグラムとなる。 母乳中のダイオキシンが耐容摂取量の範囲内かどうかを見るために、宮田教授の計算方法に基づき、乳児は1日に体重1キロ当たり150ミリリットルの母乳を飲むとして、数値を換算してみた。十勝の乳児が母乳を通じて体内に取り込むダイオキシンの平均量は、体重1キロ当たり1日に46.9ピコグラム=表1=。体重が5キロならその5倍、235ピコグラムとなる。 実に、耐容摂取量の4.7倍にもなるダイオキシンを、十勝の乳児は母乳から飲んでいることになる。数値が低い方だからといって、絶対に安全とは言い切れないことも同時に分かった。 初産者の平均値に比べ2人目、3人目の子供に授乳する母親の平均値は3.7ピコグラム、3.8ピコグラムとかなり低い=表1=。この理由は宮田教授によれば「母親は1人目の子供に1年間授乳すると、体内のダイオキシン蓄積量の60%を排出するため、2人目からは低くなる」。つまり1人目の子供に母乳を与えたときは、もっと高い濃度だった可能性もある。
10.4ピコグラムという数値は、慌てて母乳を飲ませるのをやめるほど危険な数値ではない。厚生省の調べによれば、日本の乳児が母乳から1日に摂取するダイオキシン量は72ピコグラムで、それに比べれば十勝の乳児は少ない。だが事実として、十勝の母親の母乳にはダイオキシンが含まれ、乳児の耐容摂取量を超えていない母乳は15のうちたった1つだった。対策を講じる時期は来ている。(年間キャンペーン取材班=山本薫)
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