ダイオキシン最前線
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母乳も汚染と警告〜摂取短期間は「影響ない」との見方も



七夕の日、母の願い

七夕の日の7日、東京霞が関の官庁街をベビーカーに乳幼児を乗せたお母さん方がデモ行進した。「ダイオキシン入りおっぱいはいや!」などと書かれた短冊をササの葉に結び、千代田区日比谷公園から厚生省前まで歩き、小泉純一郎厚相と石井道子環境庁長官あてに緊急対策を求める要請書を提出した。

要請書は、厚生省が示したダイオキシンの耐容1日摂取量(※注)が乳幼児を基準に設定されていないことを問題視、「乳幼児は母乳を通じて大人の数10倍の高濃度のダイオキシンを毎日摂取する状態にさらされている」と指摘している。そして、・最も弱い乳幼児の健康を保護できるよう基準をより厳しくする・環境や人へのダイオキシンの影響調査に着手する・ダイオキシンの発生原因となっている塩素の使用をやめさせる−などを求めている。

母乳とダイオキシン。子育て中の母親にとって最も関心の高い問題が、いま大きな論議になっている。

このデモを市民団体「エコロジーと女性ネット」とともに実施したグリンピース・ジャパンは「環境規制は、子供を基準にしなければならないのに、外国と比べて日本の対応は10年は遅れています」(キャンペーンスタッフの関根彩子さん)と行政の怠慢を憤る。

母乳については、環境庁のダイオキシンリスク評価研究会の報告でも1日の摂取量を体重1キロ当たり70〜230ピコグラム(1ピコグラムは1兆分の1グラム)と想定している。耐容1日摂取量の10ピコグラムを大きく上回っているのだ。

ダイオキシンと母乳との関係を調べている阪南中央病院(大阪府松原市)小児科の山本征也医師は「一般的に先進国ほど食べ物、母乳のダイオキシン汚染度が高い。中でも母乳の汚染が問題視されるのは、乳幼児は大人より汚染の影響を受けやすいからです。実害が出てからでは遅い」と警告する。母乳中のダイオキシン濃度は、諸外国と大差ない。しかし、発生源因を低減しようという対策において、日本は欧米諸国に後れを取っていると、山本医師は感じている。

実際、ダイオキシン排出量の80〜90%を占めるごみの焼却炉に法規制がかかるのは、今秋からである。しかも、新設炉の抑制基準の下限である1立方メートル当たり0.1ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム) は欧米並みだが、既設炉の上限の10ナノグラムは、数倍から100倍も緩い。対策が手ぬるいとされるゆえんだ。

さて、母乳については厚生省が昨年12月、大学教授や医師らによる「母乳中のダイオキシン検討会」を発足させ、報告をまとめた。報告では、母乳は一生飲み続けるわけではなく、免疫や発育などに利点が大きいことや、外国でも規制していないことを挙げ、今後も母乳を奨励していくべきとした。環境庁の報告でもWHO(世界保健機関)の勧告を踏まえ、母乳の推進を適当と判断している。

しかし、ダイオキシンはわずかな摂取でも甲状せんホルモンの濃度を下げ赤ちゃんの発育に影響を及ぼすほか、免疫系に作用してアトピーや花粉症などの病気を引き起こすと考える学者もいる。ダイオキシンが子供に何らかの悪影響を及ぼすのでは、との母親の不安は、国側の報告を聞かされても消えることはない。(年間キャンペーン取材班=目黒精一)(第3部おわり)


母乳提供にご協力を

年間キャンペーンでは今後、十勝のダイオキシン測定を実施、結果を第4部以降で掲載する予定です。その中で人体への影響を調査するため、母乳のダイオキシン濃度調査を検討しています。そこで、十勝管内在住の母親による母乳の提供の協力を募っています。プライバシーは厳守いたします。問い合わせは年間キャンペーン取材班(0155-22-2121)まで。


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