ダイオキシン最前線
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「食と農」あるべき姿に〜海外から情報集め発信



畑作農家 堀田誠嗣さん

ダイオキシン汚染について、十勝では自分たちの問題としてどう位置付け、考えていけばいいのか。「ダイオキシン最前線と題した企画に、研究者でも何でもない1農家の僕はふさわしくないのでは」と、開口一番、農作業で日焼けした顔でジャブを打たれたが、インターネットで情報を発信し続ける堀田誠嗣さんの考え、取り組みは1つのヒントとなる。
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「ダイオキシン問題は、食と農の流れを変える最後のチャンス」と話す堀田さん
昨年12月、帯広市広野地区で開かれた産業廃棄物処理施設の学習会に参加したのが、堀田さんが本格的に興味を持ったきっかけだった。農薬の生成時にダイオキシンが発生する事実を知り、「決して無関心ではいられない」と強く感じた。

インターネットを使って調べ始めたが、分かったことは今年1月の段階では「国内にはダイオキシンについての情報がほとんど見当たらない」ということだった。危険性が指摘され、いつの間にか使えなくなる農薬。実態が農家に知らされない現状と同じように、ダイオキシンにも「日本では大事なことは何も伝えられない」との不安が募った。

海外に調査先を広げた。出てくる情報の多さに目を見張る。探究が始まった。1950年代、欧米では農薬の製造工場でダイオキシンが職業病を起こし、廃棄物の投棄で、周辺の汚染問題が発生していることが分かり、「食糧と農業にかかわる自分には避けて通れない」との考えを一層強くした。

人を知り、本を読み、国内でもネットのリンク先が広がった。3月から自身のホームページ上で「ストップ・ザ・ダイオキシン」のキャンペーンを始めた。ダイオキシン問題の経緯をまとめ、汚染実態や生成される農薬などの情報を発信。リンクされる質問に対し返答先を紹介。その情報の多さはパソコン仲間から「農作業が忙しいのにいつ寝るのだろう」「その知識は生半可な専門家もかなわない」と言わしめるほどだ。

堀田さんを駆り立てているのは、「食と農をあるべき方向に」との情熱だ。「ダイオキシンというと、ごみ焼却場の排出規制と直結しがちだが、この問題を考える場合、ダイオキシンは環境ホルモン(内分泌かく乱物質、別名・環境エストロジェン)の化学物質の1つとの観点が必要。内分泌かく乱物質が食物連鎖によって生物の体内に濃縮されることによる影響の恐れから見ていかないと、その害のメカニズムが見えてこない。農薬の怖さにも目を向けていかなくては」と言い切る。

ホルモンの働きと似た作用をする化学物質が体内に取り込まれることによって生まれる害は、特に生殖への影響が懸念されている。特定の地域だけでなく、さらに次世代にもつながっていく問題と言える。母乳中の濃度検査で汚染レベルを知ることができるだけに、ダイオキシン汚染は目に見える形で現実を突きつけてくる取っかかりなのだ。

「安全で、健康的な食生活を支える農産物の価値観を、生産者と消費者の両方から見直す契機に。消費生活そのものを改めて考えるきっかけにダイオキシン汚染問題はなり得る。そうしていかないと、後戻りができない。食と農の流れを変える最後のチャンス」との危機感が、堀田さんをパソコンに向かわせている。 (年間キャンペーン取材班=近藤政晴)


ほった・せいじ

畑作農家。1957年幕別町古舞生まれ。帯広畜産大学草地学科卒業後、同地で農業に従事。約27ヘクタールの畑で小麦、ジャガイモなどのほか、ゴボウなど野菜も手掛ける。「電子的産直」に取り組む一方で、4年前にパソコンネットでの生産者との交流を目指し、十勝の若手農家らで組織した「食と農のネットワーク」の代表を務める。


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