ダイオキシン最前線
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十勝産品の「安全性」確立〜農学系から測定アプローチ



帯広畜産大学環境生化学講座教授 中野益男さん

「大気、土、水、乳製品、肉製品、畑作物−十勝のバックグラウンドのデータを、これから4、5年かけて集めていきたい」。帯畜大環境生化学講座の中野益男教授が取り組むダイオキシン調査が、今年から本格的に動きだす。帯広市を中心とした放射円上に10カ所の“定点”を置き、季節別に年4回、ダイオキシンを測定する手法。継続的に追跡調査するのは、十勝では初めての試みとなる。
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中野益男さん

中野教授は20年ほど前、農業環境を調べる一環として、この分野の研究に着手した。最初は化石燃料などの不完全燃焼で発生する環境発ガン物質(ベンゾエピレン)の生成過程を解明するのが目的だった。炭素を中心とした、この生成システムに塩素が入り込むことで、問題のダイオキシンは作られる。現在、研究の中心はダイオキシンに移った。

畜大は6年前、ピコ(1兆分の1グラム)の精度で物質を分析できる「高分解能質量分析計」を道内の国公立大で初めて導入した。中野教授らはこの機器をフル活用して、十勝で調査を進めていく。「ただし、結果はすぐには公開できない。十勝だけ先行して数値を明らかにすると、農業生産物の風評被害につながりかねないから…。これから全国レベルでも調査が進んでいくので、その動きに合わせて徐々に明らかにされていくだろう」

中野教授の調査は単に十勝管内のデータを収集するだけでなく、ダイオキシンの測定・分析技術を確立するという命題も背負っている。ダイオキシン分析に携わる国内の22社で組織された「廃棄物処理に係るダイオキシン類測定分析技術研究会」が進める全国調査のひとつに位置づけられているからだ。

「数値は季節などで変動する。例えば、風向きによっても大きく左右される。追跡調査を通じて、分析やデータ解釈の方法を精査していく」という。中野教授は同研究会のフォローアップ委員会のメンバーで、国内の他地域と同時進行で調査を実施する。

十勝とダイオキシンのかかわりは農業抜きには語れない。中野教授は「十勝の農畜産物は加工品も含め、ブランドとしての価値がある。今からきちんとした対策をとることで、十勝ブランドの信頼性を築くことができる。生産基準を確立し、安全で質の高いものを生み出すシステムを、十勝を挙げて構築する必要がある」と強調する。一連のダイオキシン調査は十勝産物の「安全性」を名実ともに確立するための第一歩になりうる。

「われわれの取り組みは農業環境がどうなるのか、に視点を置いている」と中野教授。この分野の研究は環境学、薬学系が中心だが、農学系からアプローチするユニークさが光っている。 (年間キャンペーン取材班=高久佳也)


なかの・ますお

1939年、京都市生まれ。帯畜大畜産学部卒、同大大学院修士課程修了。73年に北大で農学博士号を取得。西ドイツのエルランゲン大医学部奨学研究員、帯畜大講師、助教授を経て、92年同大教授。古代農環境など幅広い分野で研究活動を展開している。


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