ダイオキシン最前線
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国内外から分析依頼〜民間で技術研究会も組織



島津テクノリサーチ常務取締役 山下道政さん

4台の分析機器が稼働し、抽出されたダイオキシンサンプルが、小指の長さにも満たない小さな瓶に閉じ込められて並ぶ。分析機のうち2台は昨年、今年と相次いで導入したもの。いかにダイオキシン分析の需要が高いかを示している。京都市中京区にある島津テクノリサーチ。国内では最も早い時期からダイオキシンの測定分析をしてきた企業だ。
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ダイオキシンの分析機器と、山下道政常務
1990年、厚生省はごみ処理の旧ガイドラインを定め、ダイオキシン対策は一気に“市場化”した。「当時は焼却炉の技術改良を図るプラントメーカーに加え、400ほどの自治体が測定をしたと記憶しています」と同社常務、山下道政さん。

分析業者への需要も当然高まり、91年に分析業者は許可登録制となった。登録者は同社を含めて4社だったが、5年後には22社。現在、登録制は廃止されているが、25社で「廃棄物にかかわるダイオキシンの測定分析技術研究会」を組織し、「出てきた数値の社会的影響が大きいこともあり、技術の維持は重要」と、民間レベルで活動している。

厚生省は昨年、全国の自治体にごみ焼却場の排煙ダイオキシン検査を指導し、今年、新ガイドラインを発表した。「分析依頼も全国規模に広がった。毎年の検査が義務づけられていますし、プラントメーカーも最終的にダイオキシン生成がゼロの炉を目標にしていますからね、分析にもかなりの投資をしていますよ」。同社での分析検体も年間700〜1,000だったのが昨年は2,500まで激増した。

現在、同社に持ち込まれるダイオキシン分析の依頼は、ごみ処理場の排煙と焼却灰が多いが、ほかにも環境大気、土壌、母乳、髪の毛と幅が広い。韓国や中国からも問い合わせや依頼が舞い込むようになった。「海外の依頼は、現地のサンプリング技術や費用、こちらも手いっぱいという状況があって」と、検査まで進んだケースはない。

山下さんは、京都で94年に開かれた第14回ダイオキシン国際会議で実行委員も務め、世界の現状を知った。「ヨーロッパでは規制が厳しく、基準を超えると“やめてしまえ”ということになる。そもそも焼却炉自体が少ないんです。一般ごみ焼却場だけでも1,800カ所以上あるのは日本だけ。わが国は経済の急速な発展で、消費財が廃棄物としてものすごく出た。この狭い国土では燃やすしかないということで、補助金も出たために自治体単位でどんどん焼却場を作ったんです」。しかしそこから発生するダイオキシンは大きな問題を引き起こした。

山下さんは国の施策について「関心が高まったし、ダイオキシンそのものへの理解も深まった意味でもかなりの進歩」と評価する。

「ダイオキシンの発生をゼロに近づけることも可能でしょう」、ただし今後は「連続運転の大きい炉への切り替えと同時に、地域単位の処理ではなく集約する、いわゆるごみ処理の広域化、これが絶対に必要です。炉の数はずっと減るし、性能も良くなるでしょう。ごみを固形燃料化して発電などに使う方法もある。乾燥し、燃焼状態がよくなりますから。ただし、いずれも自治体任せでは限界がある。国からの補助も考えねばならないでしょう」と考えている。(キャンペーン取材班=福本響子)


やました・みちまさ

1932年、兵庫県豊岡生まれ。旧制中学校を卒業、農業をしながら夜間高校に通い、立命館大学法学部に入学した。59年から島津製作所に勤め、営業課長で87年5月に退職。誘いを受けて10月から系列の島津テクノリサーチ営業部長に。現在は常務取締役・事業統括部長。


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