ダイオキシン最前線
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大気汚染の評価も重視〜マツの葉から濃度測定を



摂南大学薬学部教授 宮田秀明さん(下)

厚生省の指導で、全国の一般ごみ焼却場でダイオキシンの排出濃度調査が進んでいる。緊急対策が必要とされる基準、排煙1立方メートルあたり80ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)を超えたのは、検査を終えた1,150施設中、72施設と発表されている。
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宮田さんの研究室。学生たちも、夜遅くまでダイオキシン分析に取り組む
しかし宮田秀明さんの見方は厳しい。「検査は焼却をベストの状態にして行うのが普通なわけです。日常で基準値を超えている施設は、実際には発表された数の2、3倍はあると思っています」。十勝管内で唯一基準を超えた鹿追は、今年度いっぱいで炉の使用を停止する方針だが、他の施設に関しても、この警告を心せねばなるまい。

「病院の廃棄物、産廃、金属精錬、セラミック、セメント、ガラスなどの化学工場。それから日本独特の野焼き、ダイオキシンは非常にいろいろなところから出ます。しかもダイオキシンは氷山の一角かもしれない」。特に日本の場合、実態把握が遅れている。

宮田さんが今行っている研究は、焼却に伴う汚染や、人体影響評価、ダイオキシンの生体影響を少なくするような物質を見つけることなど多岐にわたっている。

重視しているテーマの1つが、大気汚染の評価だ。具体的には、クロマツの葉に含まれる濃度から、最終的に大気中の濃度を出そうという目標を持っている。「大気はサンプルを取るのが大変なうえに、天候次第でものすごく数値が変わり、費用が高い。マツの葉を使うことができれば、一定の濃度になるし、いつでも、簡単に採取できる。何度も測る必要もないでしょう。クロマツは全国に見られ、都心部にも生えていますから」。高価なダイオキシン分析が、少しでも身近になれば、データ蓄積も進む。実態把握は、発生を抑えるための着実な一歩となる。

現状で、汚染の影響を最小限にする方法はあるのか。例えばダイオキシンが高濃度といわれる魚。「海といっても場所によって濃度が違い、魚の濃度も違う。またタチウオやイワシ、ウナギなど脂身が多い魚ほど濃度が高い傾向にあるので、消費者が選別することはできます。あとは体から追い出すこと。食物繊維を取ることは割と有効なんです。悲しいかな、日本人は根菜、野菜、豆といったものを食べなくなり、摂取量が減っているんですよ」。

宮田さんは実感している。「今は資源が安いから成り立っている。でも資源が枯渇し、何でも捨てるというわけにはいかない時代、リサイクルの時代がすぐに来ます」。企業、個人が同時に取り組む必要があると考えている。「個人でもできることは多い。缶ビールはやめてびんビールにするとかね。アルミ缶、スチールもそうですが、資源として回収しても、別の製品を作るために溶かすときなど、熱反応でダイオキシンがいっぱい出るのです」。

「例えば農家はなぜ野焼きをするんでしょうか。野焼きが悪いとは思っていないから。それは野焼きによってダイオキシンが出るということが分からないから。ならばそういう教育が必要なんですね。“なぜ”という根本教育をしていかねばならんと思う」。自覚することで変える意志が生まれる。生まなければ、ダイオキシン問題は解決しないだろう。(キャンペーン取材班=福本響子)


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