ダイオキシン 十勝の対応は
−6−

揺れる稚内(下)〜農振地域指定で阻止へ

「宗谷の酪農は、涼しい気候を生かした道内でも一番きれいな農業だと自負している。今後もそれによる効果が大きいのに、処分場からダイオキシンなどの有害物質が出ると、今まで築いてきた信用が無駄になってしまう」。沼川地区処分場建設計画に反対する会の生田目(なまため)幸男会長は訴える。

廃棄物処分場の建設が計画されている稚内市の上声問地区。飲用水の「北辰ダム」に近いだけでなく、農村地域の真ん中に位置しているほか、近くには漁港につながる河川があり、宗谷の基幹産業をなす農業と水産に影響を及ぼすことが懸念されている。
photo

廃棄物処分場の建設が計画されている採草地。夏場は緑いっぱいの農村が広がる。

農業だけで言えば、十勝の農村風景によく似たこの土地で現在、酪農家約1,000戸が年間約27万トン(十勝は約80万トン)の生乳を生産。1戸当たり約100ヘクタールの草地で、夏場の放牧を取り入れた酪農を経営している。涼しい気候で農薬の使用量が少なく、健康志向を背景に最近は、大阪で宗谷ブランドの飲用乳販売にこぎつけた。

業者が得ようとしている計画地も採草地。ここに造る一般廃棄物の焼却灰埋め立て処分地は、地下浸透を防ぐため、ゴムシートを灰の下に張る「管理型」を目指す計画。沼川地区の酪農業、島田誠司さんと生田目会長は「クリーン農業のわきに、埋め立て地や産廃焼却施設があるだけで消費者に対する説明がつかない」と前置きした上で、「東京のゴミ問題全国ネットワークによれば、日本最高の技術で造った管理型施設でも、廃棄物の重さでシートが破れ、有害物質が地下に浸透したと聞いている。それが地下水に伝わって牛の体内に入ったらどうなるか…」と技術上の問題に不信感を募らせる。

さらに、もう一つ不安がよぎる。2月14日に札幌地裁が釧路市内の産業廃棄物施設に関し、道の不許可処分を違法とする判決を言い渡したからだ。

稚内の問題についても道は、業者の設置申請を不許可の方針を示している。しかし、判決は「法律上、施設の設置基準が満たされれば、基本的に施設の設置を認めざるを得ない」との見方に結びつく。市環境衛生課の松尾誠課長補佐は「判決で業者は弾みがついたのではなかろうか。稚内も間違いなく行政訴訟に発展する」と受け止める。

基準のクリアで建設しようとする業者に対して、市は「計画地が農地という性格で頑張る以外に方法はない。業者はこの土地の農地転用で一度不許可になっている。一帯は、農業振興地域の網をかけており、土地が手に入らなければ処分場は建てられない」(鎌田紘課長)と、建てる土地を渡さないことで対処する考えだ。

ただ、これは計画地の性格から設置を阻止しようとするだけで、仮に他の土地であれば意味をなさないほか、自治体の裁量が国の法律を超えられるかとの不安も残す。処分場設置の根本的な問題は解決されていない。生田目会長は「現行法は、周辺環境に配慮することが今年制定される改正案で検討されているようだが、一番重要な地域住民の合意は含まれていない」と法的不備を指摘、国に対しても要望している。

前回紹介したように廃棄物の搬入を“水際”で防ぐことが難しくなりつつある今、捨てられる側の意向を反映した法律制定と、捨てようとする側の設置基準のクリアという2つの対立軸で条件整備の競争が続けられている。
(おわり・年間キャンペーン取材班=児玉匡史)
(97.03.31)


・戻る