ダイオキシン汚染の恐怖
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香川県・豊島(中)

山積みになった産業廃棄物の中から猛毒のダイオキシンが最高で1グラム当たり39ナノグラム(10億分の39グラム)検出された。ごみ焼却場の電気集じん機の灰と同レベルで、ドイツで採用されている体重60キロの人の1日の耐容摂取量の600倍に当たるという。ダイオキシンは廃棄物だけでなく浸出水、海岸の底質、カキなどすべての検体から検出された。

廃棄物対策豊島住民会議の石井亨さん(36)は「これがもしボトムアッシュ(焼却残さ)からの検出値だとしたらいったいどれくらいの量のダイオキシンがまき散らされたのだろうか。歴史上あってはならない事件を起こしてしまったのではないかという不安をぬぐいきれない」と語る。
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「豊島」から「小豆島」へのブランド変更を余儀なくされたミカン箱を前に語る山本彰治さん。笑顔の中にも強い憤りが…
このほか鉛、PCB、総水銀など多くの有害物質が廃棄物処理法の有害判定基準を超過していることが分かった。浸出水、地下60メートルの岩盤からも有害物質が検出された。

島の西端のごく一部に不法投棄されたものだが、「ごみの島」「毒の島」というイメージが全国に広まってしまった。農業、水産業、採石業が主要産業の島にとって決定的と言っていい打撃だ。観光客も激減した。問題が起きてから海の家1軒、民宿1軒、ハマチ養殖業者2軒が商売をやめた。

主要農産物のミカンはかつて「豊島みかん」のブランドで阪神方面に送られ、味のよさで人気を呼んでいた。ところが、1990年11月に兵庫県警が不法投棄をした処理業者を摘発したその月から、扱い商社は「豊島みかんでは商売にならない」とブランドの変更を求めてきた。以来、「豊島みかん」は「小豆島みかん」と名前を変えた。

自信のブランド「豊島みかん」を育てた山本農園を営む山本彰治さん(62)は「私のところは、投棄場所とは島の正反対で6キロくらい離れている。それでも全島がごみに埋まったイメージを持たれたようで、どうしても商品にならないということだった。私らにすると小豆島はまずいミカンの代名詞。うちのミカンはどこにも負けない自信があり、早く元の名前に返したいのだが…」と嘆く。

公害調停などで住民が声を上げればあげるほど、島のイメージは悪くなるのは事実だ。また、ミカン畑から高濃度のダイオキシンが検出されたらどんなことになるのだろうか。不安は尽きない。しかし、山本さんは「将来のことを考えれば、いい加減な決着はできない。日本の廃棄物行政の根本にもかかわるのだから」と言い切る。廃棄物が島外に撤去される日まで、公害調停申請人代表(5人)の筆頭として行動を続ける覚悟だ。
(つづく・夏川憲彦)


公害調停

公害紛争処理法に基づき、公害問題を迅速に解決するため総理府の外局である公害等調整委員会(西山俊彦委員長、7人)が間に入って調停する制度。民事裁判の和解と似た手続きで申請人が原告、被申請人が被告に当たる。

豊島住民549人が申請人、香川県、同県職員2人、処理業者、排出業者を被申請人に1994年3月に第一回調停が始まった。

申請人の弁護団長は住宅金融債権管理機構社長などで知られる日本弁護士連合会元会長の中坊公平弁護士。これまで10数回調停が行われ、7つの対策案が示されているが決着は見ていない。


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