市民活動の源流-7-

神奈川から(下)


市民団体に「場所」と「情報」
行政も「主役は市民」に徹する

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会議などが行える無料のフリースペース。
資金不足に悩むボランティア団体にとっては
ありがたい。また、後方には利用団体あての
メールボックスも付設している

県民活動のサポートセンター

 「ボランティア活動を行う上で、一番のネックは資金面。ここに来れば、会議が開けるフリースペースや資料をしまうロッカー、印刷機などの備品がすべて無料で使える。ほとんどここでかたがつく」。かながわ県民活動サポートセンター(以下・センター)について聞くと、利用者たちはこう口をそろえる。事務所代わりにしている団体も多く、センターには毎日、大量の郵便物が届く。

 ボランティア活動の総合支援センターとして開設し、2年半が経過。既設スペースを活用したため、新プロジェクトにもかかわらず、立ち上げ時は約1億1千万円の予算で済んだ。約600平方メートルの広さのフリースペースのほか、1時間200円からという低料金の会議室などが“ウリ”だ。また、専門別にアドバイザーを配置、ボランティア情報をデータベース化するなど、団体が活動をする際に必要な「場所」と「情報」の充実を目指してきた。

 センターは、(1)自主性(2)非営利性(3)公益性を満たした活動団体であれば、利用は可能だ。たとえ、行政の施策を批判する団体であっても例外ではない。年々利用者が増え、1997年度は約1500団体が施設を使用している。

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参加型社会の構築の実現に向け
期待されている「県民活動
サポートセンター」

市民団体の自主性育てる

 また、細かい使用規則はない。問題が生じた場合、利用者が自主的に意見交流の場「サロンミーティング」を開いている。広報部の石田静子副主幹は「市民団体の自主性を育てていくのがセンターの役割。共同イベントを行う際も、企画などすべて市民団体が中心で、われわれは情報や資金面などのサポートに専念。あくまでも市民が主役」と強調する。行政側もこれからの社会は、市民の力がないと動かせないことを実感。それは市民団体自身も同じだ。

 センター内に事務所を置く「下宿屋バンク」(崎野早苗代表)は高齢者などが共同生活するグループホームの、入居者と住宅提供者とを仲介する有償ボランティア団体。その際、両者の心のケアなどトータルな面でサポートする。神奈川を中心に名古屋や札幌にも会員を持ち、NPO法人申請もする予定だ。

 崎野代表は「超高齢化社会を控え、老後をどう生きるかは重要。一方、国でどこまでできるかは疑問がある。行政ができないのであれば、自分たちでするしかない」と言い切る。もちろん、国もグループホーム事業を推進、同県にも11カ所の施設がある。だが、入所には所得制限などの規制があるため、だれもが入れるわけではない。

 ただ、行政運営のセンターと市民団体とのかかわりの難しさを指摘する関係者は少なくない。昨春までセンターで勤務、自らもボランティア活動を行っている下元省吾・県行政システム改革推進室主幹は「センターの役割はボランティア団体が発展しやすい環境づくりと、行政と市民とのネットワーク化を進めること。だが、行政が特定団体を支援することに対し批判もある。何も公設公営である必要はなく、10年先、基盤が確立すれば、運営を民間に委託してもよいのでは」との見解を示している。

市民社会実現に向け歩む

 NPO法施行で市民活動が活性化することが予想され、その育成を担う「サポートセンター」の役割も大きくなるだろう。にもかかわらず、ボランティアに関して“先陣”を行く神奈川でさえも模索状態が続く。だが確実に、真の意味での市民社会の実現に向けて歩み始めている、との印象を受けた。
(年間キャンペーン取材班=佐藤いづみ) (99.1.9)

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〈NPOの役割〉
 ある社会問題を個人で改善しようとするのはかなり難しい。個人の考えだけで行動すると、助けるつもりで迷惑をかけてしまうこともある。だがそうした思いの人が集まり、的確な情報、判断のもとに組織で活動すれば、社会的な力となる。NPOは個人の思いを結集して社会的な力にする仕組みといえる。NPOが力をつけ日本社会に浸透するようになれば、財政難に陥っている自治体が、例えば障害者の生活支援など公費で行ってきた事業をNPOに任せられるようになると、行財政改革にもつながる。

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