市民活動の源流-6-

神奈川から(上)


財政難で行政の力に限界
環境、福祉…市民パワーに期待

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破たん寸前の県財政

 昨年9月14日。岡崎洋・神奈川県知事は定例記者会見の席上、「今、まさに県財政は“火の車”。徹底的な行財政改革を行わなければ、本県は『財政再建団体』に転落してしまう」と訴えた。知事自ら、県財政が破たん寸前であることを宣言したのだ。

 財政課の二見研一システム予算班主任は「職員公舎の管理運営民間委託など、全国の自治体でも異例の策を打ち出し、今年は何とか転落を免れた。だが、これで安心なのではなく、今後も徹底した事業の見直しが必要」と、来年以降も県財政が上向く要素がないことを強調する。

行政の穴埋める市民活動

 事業の大幅な見直しは住民にとって、福祉や医療など今まで行われてきた、あるいは今後必要となるであろう行政サービスが低下するのでは、との懸念を生む。

 「住民にとって重要かつ、ニーズが高いサービスは続け、強化もする。ただ、県財政の現状からも分かるように、もはや行政ですべては補えない。今後の行政の役割とは民間活力の導入をどう図っていくか。そのため、市民活動をうまく機能させる仕組みづくりがカギとなる」と二見主任。行政としては、その“穴”を民間が埋められるのではとの期待感がのぞく。

 県の財政難が表面化し、行政改革に向け、本格的に取り組み始めた1996年4月、ボランティア活動の総合支援機関として、交流の場と情報の提供を目指していこうと、全国でも珍しい県設県営の「かながわ県民サポートセンター」がオープンした。横浜駅から歩いて5分の場所にある。構想発表から開設まで実に8カ月という異例のスピード。とりもなおさず、岡崎知事自身の思い入れの深さが強く動いている。

 95年に初当選した直後、「行政システム改革の一環で、空きスペースとなる『県民センター』の6−11階部分をボランティア支援施設にする」との施策を打ち出した。前職は環境庁事務次官。退官後、自ら中心になり、環境問題のNGO(非政府組織)を立ち上げた。その際、「会議一つするにも場所がなく、大変だった」という経験をしたからだ。

社会形成「第三セクター」

 同サポートセンターの基本計画策定など立ち上げから携わり、昨春まで情報サポート課長補佐を務め、現在は行財政改革の中枢にいる総務部行政システム改革推進室の下元省吾主幹は「戦前は国家主導型、戦後は私企業主導型で社会は進んできた。だが、環境や福祉面など社会が複雑化する現在、それでは解決できない問題が出てきた。それを埋めていけるのは市民自身の力と確信している。現に市民活動は従来の、ただ権力に反対するだけの市民運動とは違い、あきらかに進化している」と、市民パワーを評価する。

 神奈川県ほど深刻ではないが、道内の自治体も財政にゆとりがあるわけではない。行政の力が限界点に達してきている現在、市民活動が「第三のセクター」として、まちづくりなど社会を形成していく上で、大きな存在となりうる日は近いと感じた。(年間キャンペーン取材班=佐藤いづみ) (99.1.8)

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<ボランティアとNPO>
混同されやすいが、NPO=ボランティアではない。ボランティアは、行政が手の届かないようなことを自発的に行動に起こすこと、例えば老人ホームでお年寄りの相手をしたり、被災地で住民のために水くみをしたりという無償の善意の行動や、それをする人がそう呼ばれる。NPOは、ボランティアとして始まった活動がより専門的に安定して展開できるように、有給の専従スタッフを抱え組織化し、維持運営のためにサービスを有償化するというように発展した形と言える。ボランティアはNPOの原動力であり、その考えや存在がなければNPOは成り立たない。
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神奈川県の財政危機
 バブル期後半に景気浮揚策として大量に発行した県債が本格的な償還期を迎えたことや、県歳入の約6割を占める県税収入がこの不況で予想以上に落ち込んだことなどが重なって起こった。自治体では、赤字額が一定限度(県の場合、次年度予算の5%)を超えると、国の管理下に置かれ、財政再建に取り組まなければならず、福祉や住民サービスなど大規模なリストラが迫られる。自主再建の道もあるが、学校建設や道路敷設など“前向き”な借金、地方債の発行が制限される。知事の宣言時、赤字額は600億円余り、リストラ策で300億円まで縮小したものの、来年度予算は全部局前年度3割カットが決定している。

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