先進地ドイツに学ぶ(7)

環境問題をリード


企業の運営方針も変更
政治経済に影響力

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 昨年9月28日、ドイツ中が沸きかえった。16年ぶりに政権の交代が決定的になったからだ。長い間、ドイツの顔だったコール氏に代わり、連立を組んで首相の座が約束された社会民主党のシュレーダー氏が、高らかに勝利宣言した。

 この連立政権実現のキャスチングボートを握っていたのは、まだ結成20年目の「緑の党」。原発反対者や平和主義者などが集い、わずかな同志らで政治・社会運動を始めたが、若者や女性層を中心にどんどん党員を増やした。現在、党員は4万3千人もいる。

 緑の党だけではない。ドイツでは非営利の環境団体が政治や経済に強い影響力を持っている。1970年代から80年代にかけ、国民が環境問題に大きな関心を持っていたことがその背景にある。

 ボンに本部がある非営利団体「ドイツ環境・自然保護協会(BUND)」。日本のNPO法人にあたるe.V(登録社団)で、共益性が認められ、税も免除されている。会員はドイツ全土に約24万人。全国に2000以上の支部があり、ここ10年間で会員が2.5倍に増えた。

■協調姿勢で取り組み

 自然保護やエネルギー問題、遺伝子組み換え反対などが活動の柱。発足当初は感情論が先行し、政治や経済の批判ばかりしてきたが、ここ10年は政府や企業などと協調姿勢で環境問題に取り組んでいる。その典型的な事業が、マーケティング部門の認証事業だ。

■認証マーク事業

 BUNDの調査部門が安全だと認めた肉や魚などの食品について、認証マークを与えるもので、これまでの活動実績があるからこそ成り立つ。現在、複数のデパートなどと契約。広報担当のルーディガー・ローセンタールさんは「これは独自の事業。今は団体の収益の1%にも満たないが、食の安全のニーズが高まるなか、成長が期待される分野」と話す。

 また、ドイツの建設法典に基づき、公的関係団体に認定されている。これは公式に建設・都市計画などに意見できるもので、民間団体では珍しい。

 たとえば、ダム建設計画があった場合、その計画を遂行すれば自然が破壊され、貴重な動植物の生態に影響を及ぼすことが分かれば、計画の早い段階で公式に計画内容の改善を求めることができる。

 ローセンタールさんはいう。「批判は結局、自己満足でしかない。根本的に解決するには、制度の改正や企業の運営方針の変更を促すことが必要だ」

 地域単位の活動も活発だ。BUND全体でも遺伝子組み換え反対を活動の柱としているが、いち早く運動を展開したのは、会員50人にも満たないBUND傘下の地方の小さなグループだった。それが今では全世界的な運動へと広がっている。そして、本部は地域グループの活動をサポートするため、団体内に助成制度を設けているほか、情報を提供している。

■環境に対する“土壌”

 BUNDとほぼ同規模で、組織形態も似ている「NABU」。国内に25万人もの会員を持つe.Vだが、そのニーダーザクセン州支部のウールリッヒ・テゥレー事務局次長も「地域の課題、全土的な課題、どちらも重要だ。現在の本部を頂点とした緩やかなピラミッド体制が良い作用をもたらしている」と話す。

 これまで見てきたe.Vが比較的小規模なものが多かったので、これらの団体の規模をみて正直、驚いた。欧米にはこのような大規模の団体がいくつも存在するという。一方、日本の場合、小規模な“草の根”団体の動きは活発ではあるものの、規模では全然及ばない。

 ただ、ドイツは産業革命スタート後、100年以上前から環境に対する国民の関心が高いという“土壌”があった。そして、団体が活動しやすいようなe.Vという制度も古くから存在していた。

 日本は昨年、ようやくNPO法が施行された。あとは市民の意識がどう高まるかにかかっている。自分の生活、自分の権利を自身で考えていくことが国民一人ひとりに求められる。環境問題にとどまらず、非営利団体全体の発展のカギもそこにある。ドイツで多くの関係者とひざを交え、そう強く感じた。(おわり)
(年間キャンペーン取材班=佐藤いづみ)(99.11.21)

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