先進地ドイツに学ぶ(6)

弱い立場の人々に居場所


同性愛者パーティ企画
同じ境遇野仲間が支援

◇  ◇  ◇

 身体の障害や血(民族)、精神(同性愛)。一昔前に比べると、こうした人たちが自分の権利を主張しはじめてきた。その背景には「自助グループ」と呼ばれる同じ境遇の仲間たちの存在があり、ドイツでも現在こうしたグループが数多くある。だが、依然として世間では偏見の目が強い。だから、彼らは常に社会での居場所を求めている。

■若者であふれる

 首都ベルリンのクロイツベルク行政区。旧西ベルリンの東端に位置したこの地区は家賃が安いため、外国人や低所得者層が多く住む。そんな一角に、パーティー企画などを行う非営利団体「SO36」の事務所兼バーがある。

 石造りの塀で重厚感があり、中は洞穴のように薄暗い。ここは常に夜になると、若者たちであふれている。だが、ここは単なる若者たちが“バカ騒ぎ”する場ではない。社会的に弱い立場の人たちの憩いの場となっている。

 彼らが展開しているのは、さまざまなテーマを持ったパーティー。SO36が直接企画する場合や、別の組織から企画が持ち込まれ、会場を貸すこともある。同性愛者を対象としたものもあれば、この地区に多く住むトルコ系の若者を対象としたものなど、ほぼ毎日開かれている。

 入場料も平均7、8マルク(450円前後)と、高くはない。これらの事業は月に1万2千マルク(約72万円)もの収益がある。

 「特に同性愛者対象のパーティーはベルリン各所で開かれているが、ここがいち早く始めたため、知名度は高い。若者の間では、ちょっとは知られた存在だ」。SO36で広報を担当するミッシェル・ゴースウィッチさん(33)は自信に満ちた表情でこう話す。彼自身ゲイで、ここで何度も“恋人”を見つけた。今の“彼”もそうだ。

 クロイツベルク行政区は都市再開発に揺れた街だった。60年代後半に再開発地区に指定されると、7千戸以上の集合住宅が除去された。5千人以上がこの地区を去り、街は朽ち果てた。一般の市民たちは怒り、80年初めには空き家の座り込みが始まった。

■市民が“不法占拠”

 もともとは映画館や展覧会場だったSO36の事務所は、空き家になり、市民たちに“不法占拠”された。それが、80年代後半になると、若者たちがだれともなく集まり、パーティーを開くようになった。

 開催が頻繁になったため、持ち主と正式に使用契約を結ぶことに。そのため、法人となる必要があり、e.V(登録社団)の申請を行った。現在、スタッフは130人に上り、パーティーの収益で給与を賄っている。行政からの助成はほとんど受けていない。

 ただ、活動の公共性が認められ、税が免除されている。10月下旬のパーティーでは入場料の中から1人1マルクを集め、トルコ大地震の義援金とした。また、パーティーの席ではほかの小さな自助グループに発表の場を与えるといった形で支援も行っており、実際にPRの場として利用するグループは多いという。

 一連の活動は、SO36の“マルチカルチャー(文化)・マルチセックス(性)”のスローガンと深く関係している。「あらゆるものを受け入れる場となりたい。特に、社会的に弱い立場の団体や個人はなおさらだ」(ミッシェルさん)。

■偏見に抗する人たち

 社会的弱者のための居場所作りに、法的手続きに基づいたe.Vという形態は大きな力となっている。そんなところからも、ドイツの非営利団体のすそ野の広がりを改めて感じた。

 パーティーに参加していたトルコ人女性サビィさん(24)が印象的だった。彼女は自らがレズビアンであることを堂々と宣言していた。彼女に道で会って、同じ質問をしても、これほど明快宣言しただろうか。それとも、その場の雰囲気が言わせたのか。そうだとすれば、確かにこのパーティーは、世間の偏見に抗して集う人たちの憩いの場となっているのだろう。
(年間キャンペーン取材班=佐藤いづみ)(99.11.20)

|6|
index


HOME