先進地ドイツに学ぶ(1)

100万におよぶ非営利団体


35万団体が税優遇
NPОの精神市民に定着

◇  ◇  ◇

 ベルリン在住のノリス・恵美さん(48)はドイツへ嫁いで20年余り。同じように異国の地で暮らす日本人女性たちの自助グループ「日本女の会」で活動している。ついこの間も仲間3人と日本の大学教授を招き、講演会の企画を提案、大盛況だった。

 また、中学教師の夫レイさん(52)はサッカー、大学生と中学生の息子二人はホッケーのクラブにそれぞれ所属。家族全体では観劇クラブと山岳クラブの会員として楽しんでいる。数年前までは子供たちが通っていた日本語学校の運営委員も務めていた。

 これらはいずれも営利を追求しない自助グループで、日本でいうNPO(非営利組織)法人にあたる。

 「特に意識したこともなかったけれど、こんなに非営利組織とかかわっていたのね」と恵美さん。

■千年以上の活動も

 日本の憲法にあたる基本法で「結社の自由」が認められているドイツの非営利団体の活動の歴史は古い。教会系の団体が浮浪者や捨て子、高齢者などの世話を行っており、長い団体では千年以上も活動が続いているという。これらは現在もなお、国内の福祉分野で重要な役割を果たしている六大民間福祉団体(プロテスタント教会救済事業団など)へと受け継がれている。

 一口に「非営利」といっても、財団や社会自助グループ、協同組合などさまざまだが、日本のNPO法人に近い形態としては、ドイツで民法に保障された「登録社団=eingetrager Verein(e.V.)」がある。

■設立方法は簡単

 設立方法は簡単。非営利で7人以上の社員がいる、目的定款を作成する-など一定の条件をクリアしていれば、裁判所にそれらの書類を申請するだけ。これは日本のNPO認定過程と似ている。出資金は必要なく、登録を受けると団体名の後に「e.V(=エー・ファウ)」をつける。

■寄付行為も控除

 だが、決定的に違うことがある。税優遇が受けられる点だ。ドイツではアメリカ合衆国同様、団体の目的が公益であるなどと認められた場合、会費や補助金、寄付金など収入が非課税となるほか、これらの団体への寄付行為も控除が認められている。

 e.Vなどのコンサルタントを行っているメセナタ社(ベルリン)のシュトラヴィッツ取締役によると、ドイツには登録社団を含めた非営利団体がおよそ百万団体はあり、そのうち35万団体が税優遇を受けている。社会構造にひずみが出始めた80年代からは、e.Vの登録が急増しているという。

■主張実現の思い

 なぜ、こんなに自助グループなどの非営利活動が活発なのか。関係者にこの質問をぶつけると、決まって「逆にあなたがなぜ、そんな質問するのかが理解できない」と返される。

 釈然としないでいると、恵美さんが「自分の主張を社会に向け発信し、実現させたいという思いが強いのよ」とさらりといった。

 日本ではまだ、ボランティアや自助グループが外に向けて自分たちの主張を発信する社会環境が成熟しておらず、あえてグループを法人化するムードにはない。

 恵美さんの言葉は、ドイツの市民にとって非営利活動が根強く定着していることを象徴的に物語っており、市民主体のドイツの社会を支えている原動力のひとつなのだと強く感じた。 (99.11.15)

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 昨年十二月の特定非営利活動促進法(NPO法)の施行以来、国内でもNPO活動が目立ち始めた。十勝でも既に六団体が法人認証を受けたが、法制度や市民意識の面では、まだ欧米諸国の後塵(じん)を拝している。年間キャンペーン「広がれ市民ネットワーク−NPOは社会を変えるか」第四部では、非営利活動の分野で日本の一歩先を行くドイツの現状をルポする。
(年間キャンペーン取材班=佐藤いづみ)

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