市民活動の源流-3-

神戸から(下)


分野の枠超え全国ネット構築へ
「震災の教訓無駄にしない」

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NVNADの専従職員。震災の
教訓を講演研修会で伝えている

被災地の法人申請第1号

 昨年12月1日、NPO法が施行され、被災地では「日本災害ボランティアネットワーク(NVNAD)」(西宮市、田中稔昭理事長代行)が第1号で法人申請した。NVNADは緊急時に備え、福島から長崎まで全国に散らばるNPOと連絡を取り合う。「例えば、北海道のボランティア団体と何かやる場合、任意団体だとどんな組織かよく分からないので、協力するのは難しい。全国に広がるネットワークをつくるには法人格が必要なのです」(田中理事長代行)。

 震災後、神戸市の東隣に位置する西宮市に集まったボランティア団体と同市で結成した「西宮ボランティアネットワーク」が前身。有給のスタッフ4人が事務所に常勤する。平時には震災で得た教訓を広めるための講演や研修会、西宮市を中心に防災コミュニティーをつくる活動を行い、1昨年のロシア船ナホトカ号の重油流出事故では、発生1週間後にNVNADが現地入り、官民連携のボランティアセンターを立ち上げ、延べ2,132人のボランティアを送りこんだ。  非常時に備え、全国ネットを構築するのもNVNADの重要な活動の一つだ。防災NPOだけでなく、ほかの分野の団体とも交流を持ちたいという。「災害時は多種多様なボランティアが必要になる。言われたことをするのではなく、できることをやる。対等な立場でネットワークをつくりたい」(田中理事長代行)。

 西宮市の北に位置し、歌劇団で知られる宝塚市の「宝塚NPOセンター」も分野の枠を超え、市内のNPO約百八十団体を支援しており、民間のデイサービスセンター「めふのお家」のNPO法人申請にも協力した。同センターも今年中に法人申請する予定だ。

 震災時、ボランティアコーディネーターとして活躍した森綾子事務局長は「リーダー不足を実感した」という。その年、被災地には約百三十万人ものボランティアが訪れたが「片道切符だけで来たり、病気した、けんかしたなどボランティアの仕事を逆に増やす人もいた」(森事務局長)。

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さまざまな分野のNPOを支援、活発な活動
を展開する「宝塚NPOセンター」

人材育成にも積極取り組み

 NPOが行政や企業と対等に渡り合うためにも、ボランティアに熟知したリーダーが必要と、同センターでは人材育成講座にも積極的に取り組む。この講座から宝塚市の市議も誕生した。ボランティアの“プロ”が育ってきている。

 「震災で感じたのは、行政は本当に困っている人から助けていくため、一般の人はどうしても後回しになってしまう。市民が動いて『助け合うシステム』をつくらなければ」(森事務局長)。法人化も、ネットワークの構築も、リーダー育成も、NPOを根づかせる仕掛けに過ぎない。被災地のNPOは口をそろえて言う。「あれだけの犠牲者が出たんだ。震災の教訓を無駄にしたくない。そのためにも、神戸からNPOの輪を広げていきたい」 (年間キャンペーン取材班=本田裕一) (99.1.5)

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<NPOとは(2)>
 日本には、財団法人、社団法人、社会福祉法人、学校法人、消費生活協同組合など数多くの公益、非営利法人があり、NPO(民間非営利組織)と呼べる団体も中にはあるが、そうした法人格は、主務官庁に縦割りでコントロールされたり、目的に該当する特別法がないと取得できないなど複雑で規制が多い。昨年成立したNPO法は、特定非営利活動法人という法人格を新たに設け、NPOが法人格を簡単に取得できるようにした。この法人格を持つことによって、単なる任意団体でしかなかった日本のNPOは、社会的認知を受けて活動できるようになる。海外とつながりの深い組織は国際的な活動がしやすくなる。

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