十勝での息吹-6-

ひがし大雪鉄道アーチ橋を保存する会


法人化で事業受託目指す
目的達成し活動は分岐点

◇  ◇  ◇

phot

アーチ橋の魅力を多くの人に知ってほしいと昨年10月に開催した秋の遠足

手弁当では活動に限界

 「会員の手弁当でやるには限界。経費をねん出するために、会をNPO法人化して保存、活用にかかわる事業を町から受託していきたい」−。ひがし大雪鉄道アーチ橋を保存する会の会長、角田久和さんは保存運動の今後をこう考えている。

 糠平湖から十勝三股にかけて、現在も旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋群が残る。2年前ごろから、所有者だった国鉄清算事業団が解散するため撤去がささやかれ、その年の10月、町民有志で会を結成した。角田会長は「会員たちはみんな手弁当でやってきた。しかし、全員の会費を集めても60万円。これではイベントなど活動を続けていくには足りない」とこれまでの活動を振り返る。

 実際、同会はさまざまなイベントを企画してきた。まず、約5600人の署名を集め、遠足やフォーラム、パネル展などを開催した。1998年7月には、民間業者や学者らが協力して、修復費や撤去費を調べ、町や関係機関に報告書を提出。このような会の努力があって、98年10月、町は国鉄清算事業団から、撤去費相当額の2億6千万円とともにアーチ橋群を取得、保存にメドがついた。

法人化申請も選択肢の一つ

 当初の目的を達成したことで、会の活動も分岐点を迎えている。角田会長は「保存が決まり会の役割は終わったと考える人もいる。“衣替え”の時期に来ている」という。NPO法人化もその選択肢の一つで、申請を検討している。

 法人化のメリットとして、角田会長は「対外的な信用を得られることが大きい。一般住民から寄付を集めるのはもちろん、官庁、役所と交渉していくのに信頼が高まる」と語る。署名活動では住民中心の活動を展開したため、一部から「おまえたちでは話にならない。偉い人を呼んでこい」と言われたこともあった。任意団体から法人になることで、対外的な信用は一層高まる。

 協会の収入(99年度予算で3165万円)のうち、最も多いのはクラブ製造業者とコース造成主から受け取る公認料で、計1400万円余り。このほか、講習会の受講料や会費が占め、町などからの補助金には頼っていない。

 前原会長は「町教委から派遣されている職員二人分の人件費以外は、すべて自主財源。競技がさらに発展する中で用具やコースの需要も高まれば、認定料収入が潤う。協会のマークも財産管理でき、愛好者には情報提供などを通じて利益還元される」と説く。

マップ作製や観光ガイドも

 また、町が取得した2億6千万円は基金に積み立てられたが、100万円の益金が出た。「このお金をアーチ橋の活用に有効利用できないか」と角田会長は提言する。「マップ作製や観光ガイドなど会も活用に協力していきたい。このお金で周辺の自然や観光を紹介するマップを作りたい。町からマップ作製の受託先になるためにはNPO法人化しなければ」(角田会長)。

 同会は行政や業者、学会との“協働”をいち早く実践、目的をしっかり実現した。同会の活動を支援してきた北海道教育大学旭川校の今尚之助教授は「ほかでは10年近くかかることを一年弱で行った。10年後のアーチ橋を考え、学びと啓発活動に取り組んでほしい」と話す。同会は次の段階、NPO法人に向けて、新たな活動を模索している。(年間キャンペーン取材班=本田裕一) (99.6.9)

◇  ◇  ◇

<メモ>
1997年10月30日に設立。代表は上士幌町在住の建築士、角田久和さん。会員は約600人。上士幌町に残る旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋の保存を目的に結成された。これまでに署名集めのほか、パネル展、遠足、保存のための報告書作成、フォーラムの開催などを町内外で展開、住民主体の活動が各方面から評価されている。事務局は町教育委員会内(01564(2)3014)。

|6|
index


HOME