市民活動の源流-10-

函館から(上)


市民が「まちづくり基金」創設
運用益で資金助成や人材育成

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函館の公益信託事業について
語る陳氏導

 世界三大夜景の一つといわれる函館の夜景を一望する函館山は、年間530万人の観光客を呼び込む道内屈指の観光スポット。そのふもとには港町の発展をたどる歴史的建造物が集積し、にぎやかに観光客が往来する。だが、その観光の華やかさとは裏腹に、山ろく地域(西部地区)は1963年に8万人だった人口が96年には2万8000人まで落ち込んだ。

トヨタ財団の奨励金を原資に

 函館市のまちづくりは西部地区の再生がポイントになり、そして、その再生に市民活動が大きな役割を果たしている。「西部地区は若者を中心として人が減り、衰退の中で古い建物だけが抜け殻のように残った」と地元の人が口をそろえる。「この地域をいかに人が住める地域にするか。そのために歴史的建造物をどう生かすかが市全体で大きなテーマ」といわれ、地元のまちづくりグループは果敢に取り組んでいる。

 まちづくりグループ「元町倶楽部」もその一つ。「まち」に対する思いを強くする有志が自由に集まり、これまでに多数のイベントを仕掛け、「函館の魅力」を自分たちで引き出してきた。  そうした中、1991年、同倶楽部の活動の一端でもある函館の色彩文化の調査研究が、トヨタ財団が主催する「身近な環境をみつめようコンクール」で最優秀賞を獲得。同財団からの奨励金2000万円を受けた。同倶楽部ではこれを次のイベント費などに利用せず、原資にして市民によるまちづくりでは初の公益信託事業「函館色彩まちづくり基金」を設立した。

 同基金事務局「函館からトラスト」の陳有崎前事務局長は基金創設にかかわった一人として、「奨励金を次世代のまちづくり、後継者づくりの意味も込めて公益信託として残すことにした。その運用益はまちづくり活動の助成に充てている」と意義を話す。助成事業は94年から始まり、これまでに市電の保全活動や歴史的建築物のペンキ塗り替えなど延べ17団体に290万円を助成してきた。

「行政に頼るのはしゃく」

 ボランティア活動には人材と資金が欠かせない。だから、同基金創設は函館のまちづくり活動に活気を与えるものになった。「特に、ボランティア活動は資金がないと何もできないのが現実。だが、その部分を行政に頼ることもしゃくだ。だから基金の意義は大きく、多少マンネリ化する課題もあるが、何とか楽しく住めるまちをつくりたい」と陳前事務局長はいう。

 函館からトラスト事務局自体の運営は基金の運用益を使えず、すべて寄付で賄っている。だが、NPO法人になることは現段階で考えていない。「法人化のメリットが見えない」のも理由の一つだが、公益信託を認可されるまで1年半の書類のやり取りで、すっかり行政官庁に不信感を抱いてしまったからだ。

 「市民の手によって創設されたまちづくり基金を市民が利用する。いわば市民が自分の財布でまちづくりを進めるようなもの」(陳前事務局長)。函館から発信されたこの手法は、自ら設立した基金をベースにして独り立ちし、次世代の人材育成も手掛けている。  
(年間キャンペーン取材班=道下恵次) (99.1.13)

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<NPOになるには(3)>

 特定非営利活動法人になると、毎年1回、事業報告書、決算報告書、役員名簿などを、所轄庁(十勝管内に事務所がある場合は十勝支庁)に提出しなければならない。また所轄庁、法人ともに書類を情報公開する義務がある。法人化すると活動にそうした責任義務が生じるほか、住民税、法人税が課税されるデメリットはあるが、その代わり、団体で財産が所有でき、補助金の受給や事業受託にも信用が増して、活動を展開しやすくなる。 

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