幼児教育の役割とは

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「意義見極めのチャンス」

「子供がたくさんいるときには社会全体が立ち止まってじっくり考えなかった。少子化を迎えて『このままでは大変だ』と騒いでいるが、逆に今こそ幼稚園の持つ役割や存在の意義を見極めるチャンス。それができない幼稚園は淘汰(とうた)されるだろう」−学校法人・南学園の理事長で、つくし幼稚園園長の天野和幸さん(60)の言葉は明快。長年、幼児教育に携わってきた人の発言だけに重みもある。


帯広・つくし幼稚園
天野 和幸園長

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「自然な子育てに戻ることが大切」と天野園長
幼児教育に重要な役割を担う幼稚園の園児は、道教育庁が公、私立両方の統計を開始した一九七〇(昭和四十五)年、十勝管内で二千八百二十人。園数は公、私立合わせても十八しかなかった。それが昭和四十年代後半から五十年代にかけて、園の新設や三歳児(年少)保育の普及などの要因が重なり、園児数が急速に増え始めた。

七三年に三千人台となった園児数は、わずか四年後の七七年に四千人を超え、ピークの八三年(昭和五十八年)までほぼ一貫して右肩上がり。園数も二十年前から、三十を超す体制が定着している。

「十年ほど前に三歳児保育が本格化した時点で園児数は増えたが、それ以後はほぼ横バイ」(天野さん)と分析する。第二のピークは九〇年(平成二年)、市内私立幼稚園の三歳児保育が軌道に乗ったころに重なる。

昨年度末の段階で、十勝管内の幼稚園は公立十一、私立二十二の計三十三園。園児数は四千二百七十九人。園数はピークの八三年と同じだが、園児は五百人ほど少ない。学級の少人数化も進んでおり、幼稚園経営には圧迫感が増す。子供はさらに減少することが確実なだけに、危機感は一層強まっている。

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その一方、共働き世帯の増加などで、保育所ニーズは高まる一方だ。保育所は夜間や延長などの保育サービスを拡大中。子供の絶対数が減ってくる中で、幼稚園側の「対保育所」への“あせり”は強まる。町村部では公立幼稚園と保育所の“合併”が町議会で論議されたこともあった。

「しかし、個人的な意見だが」と前置きして、天野さんはそうした考えに疑問を示す。「幼稚園は教育、保育所は社会情勢をもにらんだ福祉。この両者はどちらも大切で、本来比較されるべき対象ではない。幼稚園にはここでしか得られない経験がある。幼稚園が選ばれる基準は、親の『都合』ではなく、この子の将来のためにどのような教育をするか−という点でなければならない」

最近、幼稚園では入園前の父母見学が増えている。「親たちは熱心に教育の中身を見ていく。幼稚園は今まで以上に厳しい目で選ばれるようになるが、園が子供のためにマジメに、一生懸命教育していけば、必ず認めてくれる親はいる」と強調する。

「自治体から補助金をもらえるから産む、預ける所があるから産む−というのは自然ではないし、効果も疑問。父と母がいて、適当な数の子供がいて、親がその子供にきちんとした人格を残してやるのが人間の自然の形。今の時代、ぜいたくや欲にかられて、自然な子育てを忘れている親もいるのでは」−天野さんの指摘は辛らつだが、子供の教育には時代に流されてはならない信念や理念があることを思い起こさせる。(年間キャンペーン取材班=高久佳也)(完)


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