家制度など絡み合う要因

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成熟社会への試金石に

「日本社会の長期的発展を考える際、少子化の問題を無視して通過することはできないだろう。どれだけうまくクリアできるかが、日本の経済成長も含めた、本当の意味での成熟社会をつくれるかどうかの試金石になる」。道庁の依頼で道の少子化の要因に関する研究を行っている、北海道医療大学の鈴木幸雄助教授(45)=社会福祉・児童福祉専門=は予想する。


北海道医療大学
鈴木 幸雄助教授

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「少子化の問題は、今後本当の成熟社会をつくれるかどうかの試金石」と語る鈴木幸雄北海道医療大学助教授
歯止めをかけるためには確かな要因の追究が急務。ただ、要因は一つではない。「いくつもの要因が複雑に絡み合っている。突き詰めれば、日本の家制度や雇用制度など、社会構造にまで行きついてしまう」。問題の根は深い。

少子化の要因は大きく分けて四つあると考えている。(1)経済的要因(2)女性の労働的要因(3)日本社会が抱える文化的要因(4)保育・育児的要因だ。この中でも特に「女性の労働的要因が大きい」と力説する。

女性の社会進出が増えてきたが、実際に働く上では、非常に大きな不平等があることは否めない。「子育ての部分でいえば、育児休暇はものすごく取りづらい。民間では、取るとクビになるような状況にすらある。当然の権利のはずなのに、勇気がいる行為」というのだ。

また、保育についても「サービスの問題が、結果的に母親に負担を掛けている」と分析する。保育は午前九時から午後五時が基本。だがこの時間帯で仕事が終わる母親ばかりではない。病児保育や乳児保育もほとんど行われていないのが実情。「子供が三八、九度の熱を出すと、すぐ親が呼ばれる。そのときに理由を話して、本当に理解してくれる職場はまずない。しかもほとんどの場合、母親が犠牲になる。これではよほど育児が好きでない限り、三、四人産むよりは自分の自由を求めて当然だ」

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帰宅の途につく女性たち。真の労働状況改善がなければ、子どもを産み、育てる姿勢は難しい(写真と本文は関係ありません)
男女雇用機会均等法と、男女共同参画二〇〇〇年プラン。女性の社会進出を後押しするはずの二つの法制度だが、理想と現場の対応とのギャップは大きい。「少子化が進行しているのは、女性の“ストライキ”だと思っています」

しかし今年、厚生省発行の『厚生白書』が変わった。少子社会について問題提起する部分に多くのページを割き、女性の子育てを一つの仕事として認知することを求める内容が記されている。「画期的なこと。ただ願わくば、子育てがしっかりできるような条件整備(サービスの数値化)まで踏み込んでほしかった。政策ならば数値は必要。絵にかいたもちにならないよう、次の段階で踏み込んでくれることを期待している」という。

一九八四年から九年間、帯広大谷短大で教べんを取っていたこともあり、十勝に対する思い入れは強い。今回研究の基礎データとしてグループで取り組むアンケート対象都市には、管内から三市町が入っている。集計結果は年明けになるが、「これからは、育児などに対する理事者の理解や住民のリーダーのあるなしで、自治体間に大きな差がついてくる時代。その面では十勝は帯広市の保育制度や芽室の育児サポートなど、全道的に見ても進んでいるところ」と一定の評価を示す。

経済的にも将来への不安感がぬぐえない中で、“少子化”という問題に、国や地方自治体、会社、そして住民がどれだけ真剣に向き合うか。どれ一つ欠けても、問題解決の道は遠のく。(年間キャンペーン取材班=植木康則)


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