「学校教育にも変化の波」

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画一から個性の伸長へ

少子化は、子供たちに画一的な授業を施してきた従来の学校教育を覆す。児童・生徒の個性を伸ばす上では、歓迎すべき点が多い。ただ、親子の人間関係さえ希薄になっているといわれるこの時代、一人ひとりに内在する興味や能力を引き出すのは容易でない。学校、そして地域に求められる役割について、帯広市教委の大内亮学校教育部指導参事(57)に聞いた。


帯広市教委学校教育部
大内 亮指導参事

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「少子時代の学校教育は、子供たちの人間教育をどう高めるかが課題」と説く大内参事
今年度の市内小・中学校の児童・生徒数は一万八千三十九人。一九九六年度からわずか三カ年で市街地の一校と等しい六百七十二人が減っており、少子化の波は急速に押し寄せている。もちろん、その波は負の側面もあらわにした。「家庭内少子化の影響で、粘り強さや判断力、社会性に欠ける子供が増えている」

また、単純に子供の数が減ることで「少年団や部活動の一部が成り立たない学校が表れるほか、子供会行事が停滞する町内会も目立っている」という。子供たちは家庭はおろか、戸外でも対人関係を築く機会を失いつつあり、人間性や社会生活の規範が身につかないまま育っているのだ。

子供の人格形成に表れる問題の解決に向け、市では今のところ具体策を講じていない。「首都圏の一部小学校は教科担任制を導入し、児童一人に毎日複数の教師が接している。中学校では選択教科制を採用して他学級の生徒と共に学ばせ、人間の多様性を理解できるよう工夫している例もある」という。子供の自主性を尊重する選択教科制は、個々の秀でた能力を伸ばすことにもなる。

さらに、授業そのものの進め方も変容しつつある。全国的には、一教室で二人以上の教師が指導するチームティーチングが注目されているほか、文部省の新学習指導要領に基づく「総合的な学習の時間」では、教科書のようなマニュアルに縛られることなく、子供たちが社会に飛び出して地域独特の歴史や産業など興味を持ったテーマを追究することが可能になった。

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「教師自身も積極的に企業体験や社会参加をこなし、子供たちが主体的、能動的に取り組める教材を持ち帰る努力が重要となる。このような体験学習を通じて地域の大人と触れ合うことは、人間関係を開拓し、さらに広げていく苦労と喜びを味わえる意味でも計り知れない収穫がある」

開かれた学校へ

学校教育を充実させる地域の役割としては「父母のボランティアに、図書室での読み聞かせや蔵書整理などをお願いしてもいい」と具体的なアイデアを示す。また、空き教室の活用については「PTAに提供すれば、父母と学校の意思疎通が深まり、開かれた学校づくりが進む。自由活動の空間や動物飼育、郷土資料展示などに使うことも考えられる」と提案する。

過疎の影響を受けている管内の郡部校では、自然にも恵まれた開放的な教育環境を掲げ、都会から留学生を募るケースがみられる。そこには、閉ざされたコミュニティーで生まれ育った地元の子供たちの視野を広げたいという願いがこもっている。少子時代に合わせた学校教育の在り方は、そんな小さな学校の試みに通じるのかも知れない。(年間キャンペーン取材班=岩城由彦)


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