「子育ての楽しさを」

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若者の意識改革訴える

「若い人には子育ての『楽しさ』や『精神的な満足感』といったプラス面にもっと触れてほしい」。帯広大谷短期大学の大竹智助教授(36)は、少子化に歯止めをかけるためには、これから子供をもうけていくであろう若者の意識改革が必要だと感じている。

児童・家庭福祉が専門で、少子化は若者の子育て観の変化が一因、と考えている。具体的には「体験のなさと知識の偏り」があると分析する。


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今、若者に必要なのは子育ての喜びといったプラス面の経験と話す大竹助教授

「親になるのが不安」

一つには子供を産み育てるということに否定的イメージを持つ学生が、少数ながら出てきていることだ。講義で「将来は、結婚したいか」と聞いたところ、ほとんどの学生が「結婚したい」と答えた。しかし、中には「子供に冷たく接してしまいそうだから、子供は欲しくないし結婚もしたくない」という回答を寄せた学生も。「自分が子供の時に親子関係で心を傷つけられた体験があって、自分自身、親になるのが不安」といった理由からだ。「今の子供は物質的には豊かになったが、親との会話など触れ合いは減った。だから、一度、親子関係で傷つくと、なかなか立ち直れるような“良い思い出(体験)づくり”ができない。子供を持つことに否定的なまま大人になる」。こうした学生は確実に増えてきていると実感する。

「虐待」意識で偏り

一九九七年十二月に同短期大学の在学生四百二十七人を対象に「子供の不適切なかかわり(虐待)に関する意識調査」を行ったところ、「子供の腹を足で蹴(け)り上げる」「親が思春期の娘の胸を愛撫(あいぶ)する」などについては約八〇−九〇%が「虐待」と答えた。しかし、「親の帰りが遅いため、子供はいつも夕食を一人で食べている」「夜、子供を寝かしつけてから、夫婦で遊びに出掛ける」といった問いには全く問題ない、あまり問題ないと回答する学生が予想以上に多かった。

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「子どもの不適切なかかわりに関する短大生の意識」(大竹智、帯広大谷短期大学紀要、1998年)から一部抜粋
外傷を与えたり、生命の危険を伴う行為、性的虐待についてはほとんどの学生は高い意識を持つ一方、アメリカやカナダでは一般的に虐待とされている「無関心や怠慢」については、認知が低い。「認知されているものと、そうでないものがはっきりと分かれている。文化の違いもあるだろうが、ここまで“偏り”があるのは問題だ」と考察する。

マスコミにも一因

「体験のなさと偏り」を生み出した原因の一つとして、マスコミを挙げる。マスコミの若者に与える影響は多大で、実際、「親がパチンコをしている間、乳幼児を車に残しておく」ことは虐待とする学生が多かったことは、ここ数年、ニュースなどで頻繁に取り上げられているためだという。「マスコミはどうしても、子育てについても親の苦労や虐待といった暗い部分にしかスポットを当てない。だから、若い人は『子育ては大変なんだ』と思い込む」と若者の心にゆがみが生じていることを強調する。

今は、子供をもうける前に子育てを経験・体験することが必要だが、特に「子育ての良さ」を知るべきという。「子供をつくりたいという気持ちも芽生え、ひいては少子化を食い止められる」と根本的な部分に立ち返ることを勧めている。(年間キャンペーン取材班=猫島一人)


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